安倍・プーチン会談は千載一遇のチャンスだ 日ロの経済協力と四島一括返還への道筋

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安倍晋三首相(左)はロシアのウラジオストクを訪れ、プーチン・ロシア大統領(右)と首脳会談を行った。写真は2日、ウラジオストクで撮影(2016年 ロイター/Sputnik/Alexei Druzhinin/via REUTERS)

9月2~3日、ロシア政府が主催する東方経済フォーラムがウラジオストクの極東連邦大学で開催された。2日には安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の首脳会談が行われ、プーチン大統領が12月15日に訪日し首脳会談を行うことが決まった。

そこで今回は、日ロ間でどのような協力関係がありうるのかを深掘りしたい。私自身は26年間ロシア貿易に従事し、訪問回数は60回を超えているが、その道のりは困難の連続であった。最近はロシア貿易やロシアへの投融資に興味をもっている企業が増加しているようだが、ロシア取引の要諦は「焦らず、慌てず、諦めず」。日本人のロシアに対する偏見や思い込みも、日ロ経済関係を阻害してきたとの印象もある。

企業誘致に本腰を入れ始めたロシア政府

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私は8月中旬にウラジオストクを訪問した。その目的は、極東沿海州におけるレアメタル資源開発、金属スクラップ産業、電池産業分野での投融資条件の確認と協力関係の打ち合わせである。経済フォーラムは「お祭り」的な要素が強くゆっくり議論することが難しいし、ロシア側の優先順位は極東地域の物流インフラなので、鉱物資源や漁業、林業、エネルギーについて後回しになってしまう。そんな懸念もあったので、あらかじめ打ち合わせしておかないと、経済フォーラムでの話し合いが雑駁なものになると考えたのである。

ロシア極東発展省によると、ロシア政府は極東ロシアへの進出企業のインセンティブとして、以下の優遇策を提示してきた。

・最初5年間については所得税ゼロ、次の5年間は所得税を5%とする
・通常は32%である企業税を新規進出企業については7.6%とする
・投資金額が500万ルーブル(約7万6000米ドル)以上の進出企業には土地を安く貸し付けると同時に、工場建設に必要な産業インフラはロシア政府が用意する
・ウラジオストクの自由港に2017年末に保税工場を許可する
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