民進代表選「第3の候補」ギリギリ出馬の裏側 玉木氏の推薦人たちが持つ危機感とは?

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おかげで玉木氏は告示日直前の貴重な5時間を失ってしまう。

前日の見込みでは1日の夕刻には出馬会見し、夜にはTBSの「ニュース23」に蓮舫氏や前原氏とともに出演するはずだったが、テレビ出演どころではなくなった。玉木氏は午後8時に新幹線に飛び乗り、三河安城に向かった。愛知13区の大西健介衆院議員から署名と捺印をもらい、19人目の推薦人になってもらうためだったが、その心境は複雑だったに違いない。

20人目の推薦人が決まったのは9月2日早朝

玉木氏(左端)は、なんとか20人の推薦人を集めることができた

玉木氏が不在の東京では、20人目の推薦人である石橋氏に対する説得が行われていた。番記者たちの調査によれば、「石橋氏は玉木氏の出馬に賛同しており、玉木氏が直接に頼めば推薦人になる」と位置づけられていた。

しかし石橋氏はNTT労組出身のため、代表選推薦には労組の承諾がなくてはならない。だがNTT労組が傘下に入る連合は蓮舫氏支持を表明していたため、NTT労組はなかなか承諾しなかった。野田三七生同労組委員長がようやく承諾したのは2日の早朝。なんとか告示までに間に合った。

こうして玉木氏は“3人目の候補”として出馬が叶ったが、この出馬を最も喜んでいるのは玉木氏の選対事務局長を務める荒井聡衆院議員だろう。荒井氏は菅直人元首相の代表選出馬で事務局長か選対委員長を務め、野田氏や海江田万里前代表の出馬の際も、選対で重要な役割をはたしている。これらの経験から、なんとしても代表選での一騎打ちを避けたいと願ったという。

「僕は代表選一騎打ちにはトラウマがあるんだ」

荒井氏は菅氏と小沢一郎元幹事長の一騎打ちとなった2010年9月の民主党代表選が、党の分裂のきっかけとなったと述懐する。結束を固めるべく代表選を行って新しくスタートしたはずだったのに、一騎打ちに負けた小沢氏側にしこりが残り、それが彼らを党から去らせた原因になったというのだ。

さて候補が3人となった民進党代表選は、15日の投開票までにどのような展開を見せるのか。新代表は1度で決まるか。あるいは1回目の投票で決まらず、上位2名の決戦投票になるのか。

民進党が新代表として選ぶのは「新世代の民進党」を提唱する“バリバリの保守”の蓮舫氏か。それとも「ALL FOR ALL(みんながみんなのために)」を標榜する前原氏か。あるいは故・大平正芳首相が立案した「田園都市国家構想」を引き継ぐ“リベラル保守”の玉木氏なのか。

いずれにしろ民進党の最初の代表選は、今後の党の方向性を決定付けることになるに違いない。

(撮影:尾形 文繁)

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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