鉄道の「自動運転」は車よりずっと進んでいる 新興国などで期待集める「新交通システム」

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山万ユーカリが丘線。軌道の中央にある軌条に沿って走る「中央案内方式」だ

この10年前、神戸製鋼所はボーイングと提携を結び、AGTの研究を始め、4年後の沖縄海洋博で来場者の輸送システム実現に関わった。同じ神戸市に拠点を置く川崎重工業や三菱重工業もAGTの研究を進めて、ポートライナーは3社が関わることで完成した。

その後、日本車両製造が開発に関わった千葉県の山万ユーカリが丘線、新潟鐵工所(現新潟トランシス)が中心となって作られた大阪市交通局南港ポートタウン線「ニュートラム」など、さまざまな規格のAGTが生まれたことから、日本での統一基準の必要性が議論されるようになり、1983年に国土交通省の前身である運輸省と建設省が標準化のための基本仕様を決定した。

この時点で、側方案内による案内方式、直流750V、水平可動案内板方式による分岐、車両・建築限界寸法、満車時重量、ホーム高などが決められた。

国内統一規格で海外展開も有利に

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側方案内方式の埼玉新都市交通「ニューシャトル」新型車。タイヤ付近から横に飛び出したアームに案内輪(上側)と、ポイントで車両を誘導するための分岐輪(下)が付いている

側方案内とは、軌道の両側に取り付けられた案内壁に案内輪を押し当て、これに沿って進む方式だ。ほかに中央に案内軌条を設けた中央案内方式もあるが、現在日本でこの方式を用いるのはユーカリが丘線のみとなる。

側方案内方式の場合、案内壁の下方内側に分岐用案内板があり、分岐部分(ポイント)ではこの案内板の一部を左右に動かすことで進行方向を変える。車両には案内輪の下に分岐輪が付いており、案内輪は外側で案内壁、分岐輪は内側で分岐用案内板に接触しながら走る。

ただし日本で初めて開業したポートライナーは、分岐用案内板を浮沈させる(案内板を上下に移動させる)方式を取っているので、分岐輪は持たない。

満車時の重量が規定されているのは、鉄輪ではなくゴムタイヤを用いるからである。ゴムタイヤの採用によって走行音が抑えられ、加減速や登坂性能に優れるが、逆に重量面では制約が大きくなっている。

その後国内で建設されたAGTはほとんどこの規格に則って作られることになり、海外展開もしやすくなった。現在は三菱重工業が車両製作に積極的で、「クリスタルムーバー」がシンガポールやマカオなどで走っている。

なお愛知県を走る通称リニモ(愛知高速交通東部丘陵線)は名称が示しているように鉄輪もゴムタイヤも持たない磁気浮上式鉄道であり、AGTとは別物と考えられている。

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