“作り手”の発想、電子書籍が変える 【第2回】普及のカギはコンテンツ、タイトル数に意味はなし
――電子書籍市場を拡大させるためには、どのようなことが必要でしょうか。
「読みたい」と思える本が、電子書籍にあること。これだけです。
言い換えれば、市場拡大のきっかけになるのは、今も昔もソフト(コンテンツ)です。決してハード(端末)ではない。
前回も話しましたが、ハードなんて、自分が今、どこの会社の製品を使っているのか、意識しないぐらいがいいんです。電子書籍専用端末でなくても、ノートパソコンでもスマートフォンでもいい。
僕は1冊の本をいろんな端末で読んでいますよ。読みかけでも、どこまで読んだかわかるようになっていますから。
――電子書籍専用端末を持つ企業は、人気作品を自社のオリジナルコンテンツにすれば、読者の囲い込みも期待できます。
それは愚かな発想だね(笑)。
読者を端末に縛り付けようなんていうのは、文字どおり「作り手」の発想。「この作品が読めるのは当社の端末だけ」なんて言ったら、読者から敬遠されるだけですよ。
端末を売って儲けようと考えるのがおかしい。タダとは言わないけれど、赤字にならないぐらいの価格で配っちゃえばいいんです。
現在、国内の電子書籍市場では、コンテンツの数、すなわちタイトル数を競う傾向がありますが、これも意味がありません。タイトル数なんて、時間さえかければどんどん増えます。あっという間に、どの会社も100万冊規模になります。
他社の端末を含めて、どんな端末でも読める。それでも読者に選ばれるサービスを提供しなければ、電子書籍市場では生き残れません。