MBA坊主、ダボスへ行く! 世界が「日本的精神」を待っている

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 最新
拡大
縮小

みなさんから私が聞き取った「みんなの思い」を託す船として、昨年には一般社団法人お寺の未来が立ち上がりました。お寺からニッポンを、世界を元気にしたいという私たちの活動は、多くの方からの大きな期待と応援という追い風を受けています。特に、昨年の春に「未来の住職塾」を開講してからは、生まれ変わりつつあるお寺の大きな胎動を実感するようになりました。

今までは、社会環境の大きな変化に対してお寺のありようは受け身だったように思います。しかし今、私が感じているのは、社会をよりよいかたちへ主体的に導く「社会の変化の中心軸」としてのお寺のあり方の可能性です。その可能性は、まだ花開いて皆に見えるところまでは育っていませんが、確かにつぼみが膨らんできています。

おカネの時代は終わりを迎えつつある

そして、お寺の動きに呼応するように、社会の側もその未来にお寺を求め始めています。

たとえば、「仏教がダメなら、もう日本はダメだと思ったから」と言い、第一線のコンサルタントのキャリアを捨てて、未来の住職塾を一緒にやることになった井出さんという方がいます。そのほかにも、実力のある若い人たちは、早くも「旧来の価値観からの出家」とも言える行動をとり始めています。

また、資本主義の最前線で数々の企業を育ててきたような投資家の人が「もう、おカネの時代は終わり。これからは本当に世の中のためになる分野にこそ自分の力を注ぎたい。そしてその分野はおそらく、仏教だと思っている」という時代です。一昔前では考えられないことですが、時代の前線はそういう方向に動いています。

今や、お寺の未来は、お坊さんだけでなく、ご先祖にとっても、私たちみんなの未来にとっても、大事な問題です。これからはより一層力を入れて、よりよいお寺の未来、仏教の未来、世界の未来を切り拓くべく、ヤング・グローバル・リーダーズの一人として発信していきたいと思います。

このたびの光栄は、ご縁のあるすべての方々のおかげです。読者の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

松本 紹圭 光明寺 僧侶

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まつもと しょうけい / syoukei matsumoto

1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。蓮花寺佛教研究所研究員。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺の音楽会『誰そ彼』や、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。

ブルータス「真似のできない仕事術」、Tokyo Source「東京発、未来を面白くするクリエイター、31人」に取り上げられるなど、仏教界のトップランナーとして注目される。2010年、南インドのIndian School of BusinessでMBA取得。現在は東京光明寺(komyo.net)に活動の拠点を置く。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。全国各地で各宗派から意識の高い若手僧侶数十名が「お寺から日本を元気にする」志のもとに集結し、学びを深めている。

著書に『おぼうさん、はじめました。』(ダイヤモンド社)『"こころの静寂"を手に入れる37の方法』(すばる舎)『お坊さん革命』(講談社プラスアルファ新書)『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカヴァー21社)『脱「臆病」入門』(すばる舎)など。
 

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT