いまだ原因わからず B787問題の行方 原因調査が続く中、ボーイング社は改善案を発表

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いまだ原因はわからず

ただ、787型機のバッテリー異常過熱をめぐっては、問題発生直後から日米の航空当局が調査を行っているにもかかわらず、いまだ直接原因が判明していない。「原因がわかっていないのに、これで安全と言い切れるのか」──。会見での報道陣からの質問に、同社は「あらゆるトラブルを想定し、そのすべてに対応できる万全の対策を取った」と安全性を繰り返し強調した。

ボーイングにとって、バッテリー問題の解決は経営の最優先課題。何しろ、787型機は同社の今後の旅客機ビジネスを担う最新鋭機だ。FAAが1月に運航停止命令を出して以降、飛べない787型機の機体出荷は止まっている。こうした状態がさらに長引けば、同機がイメージダウンするのみならず、1機200億円近い代金収入が途絶えたままで、さらには顧客航空会社に対する賠償・違約金負担も膨れ上がる。

運航停止に頭を抱えているのは、日本の航空大手2社も同じだ。2011年秋にデビューした787型機は世界で約50機が納入済みで、日系2社がその半数を占めている。中でも第1号顧客となった全日本空輸はすでに17機を保有し、同機の運航停止で1月に14億円の減収要因を被った。2月以降もダイヤ変更を余儀なくされ、787を利用し1月に就航した成田─米サンノゼ線はわずか1週間で運航休止に追いやられた。日本航空も保有する7機が飛ばせず、成田─ボストン線、サンディエゴ線などの減便を強いられている。

「運航再開に向け話ができるようになったことは、大きな前進だ」。全日空の篠辺修副社長(次期社長)はそう語る。燃費性能に優れた787型機は航空会社にとって魅力が大きく、全日空が計66機、日航が計45機の導入計画を変えていない。早期に運航再開できるか。関係者はかたずをのんで見守っている。

(撮影:梅谷秀司)

週刊東洋経済2013年3月30日号

渡辺 清治 東洋経済 記者
桑原 幸作 東洋経済 記者
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