世界で戦うためのコースセッティング 日本ツアー選手が世界で羽ばたく準備を本格化

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3月8日から女子プロゴルフツアー第1戦が沖縄で開幕しました。毎日日焼けを心配するほどの暑さの中、2日間の予選通過スコアは1アンダーで、パープレーでは予選落ちというハイレベルな戦いでした。優勝争いは森田理香子プロと横峯さくらプロが13アンダーで並びプレーオフに突入し、バーディーを奪った森田プロが今季初優勝を手にしました。

さて、今回のコースセッティングですが、バーディーを取らなければ予選も通過しない、そして初日から決勝まで毎日アンダーパーでプレーしなければ順位は下がり、できるだけバーディーを量産しなければ上位には食い込めないセッティングにしました。今回は特にグリーンコンディションがとてもよかったですし、そのうえ高麗グリーンの芝目やカップ際でのボールの切れ方など、ベントグリーンでは表現できない難しさとのベストコンビネーションを生かすことができました。バーディーがたくさん出ると、どうしても易しいのではないか、という質問をよく受けますが、コースが易しいのではありません。プロの試合では明確な目的の下、ゴルフ場の各ホールの特徴を生かし芝の育成を考慮して、ティーグラウンドの位置、グリーンの硬さ、速さ、ラフの長さなどを決めて試合用の仕様に変えていきます。

今年から試合用のセッティングにいろんなバリエーションを取り入れてやっていく予定です。なぜなら世界で勝つために、という大きな目標があるからです。現在国内ツアーであっても、海外から多くの強豪選手が参戦する時代になりました。世界のゴルフツアーもインターネットでリアルタイムで見られる時代になり、日本選手の世界での活躍が期待されています。さらに2016年にはゴルフがオリンピック競技に入り、世界との競争はもう目の前です。そんな中、日本ツアーの選手たちが世界で勝っていくための準備が必要であり、その一つがコースセッティングなのです。

セッティングは大きく三つに分類されると考えます。一つ目はメジャーで行われている、優勝スコアをイーブンパー前後に設定するやり方。二つ目は、4日間で20アンダー以上出るようなバーディーを取り続けなければ上位にいけない、ハイスコアでの戦い方。三つ目は、その中間。今回初戦の試合は、二つ目を採用しました。プロでも毎日60台で回るのは大変なことです。66とか65とかを出す癖をつけておかないと、急には出ないものなのです。パーを取るのがやっとのセッティングばかりやっていたのでは守るゴルフが身に付いてしまいますし、いつもある一定のスコアで勝つようなセッティングではプレーの幅が広がりません。

毎週の試合の中でさまざまなセッティングに接していれば、選手の対応力に磨きがかかり、世界に出たとき、どのセッティングに当たっても対処できると思っています。

小林 浩美 プロゴルファー

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こばやし ひろみ

1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。

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