円高は終わり、「長期円安時代」が到来へ 市場動向を読む(為替)

拡大
縮小

(2)生産性の伸び悩みは、1990年のバブル崩壊後に顕著になった現象で、従来、米国を大幅に上回っていた日本の労働生産性の伸び率は1990年代半ば以降、米国を下回る状態が定着している。企業の設備投資抑制に伴って、資本ストックの積み上がりにブレーキがかかった。その結果、労働装備率(労働者1人あたりに投下されている企業資本)が頭打ちとなり、生産性改善の阻害要因となってきた。

この間、企業はアジアを始めとした海外への直接投資(海外での設備投資)を増やし、それら国々の労働装備率と生産性の改善に貢献。相対的な日本の国際競争力を一層、減退させたのである。

そして、日本企業のこのような企業活動変貌の背景となったのは、1980年代終盤の東西冷戦終結後に明確になった(3)グローバル化の流れである。日本だけでなく、アジア地域全体が世界の工場となる時代を迎え、企業の国内外における投資活動を大きく変貌させたのだ。

こうした世界的な競合が増すなか、日本の主な輸出産品である工業製品価格に対する下落圧力が高まった。一方で、新興国経済の拡大に伴って資源需給は逼迫し、日本の主な輸入品である一次資源価格が上昇した。日本の交易条件(輸出価格÷輸入価格)は1990年代半ば以降、趨勢的に悪化傾向をめぐり、貿易収支も次第に悪化しやすくなっていった。

18年前に終わった実質円高

こうしたなかで、実質実効円相場も1990年代半ばにピークをつけた後、交易条件悪化に伴って下落基調をたどってきた。ドル円を始めとした名目為替レートは、2011年に変動相場制移行後の円最高値をつけたばかりだが、実質為替レートでは円高のピークは18年前だったのである。

実質為替相場を下落させるものは、名目為替レートの下落か、海外に比べた相対的なディスインフレ(もしくはデフレ)である。言うまでもなく、過去18年間、実質実効円相場を押し下げてきたものは後者であった。

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