若手社員にも出来る「なじみの店」の作り方 常連さんの特徴は来店頻度と「気遣い」にある

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「小さなお店ならなおさらですが、混雑時はどうしてもキッチンが立て込んでしまう。そんなときに常連の方にそういっていただけるととても助かりますね」(豊野さん)

また、豊野さんの店では、なじみ客ほど混雑している時間を避けて来店してくれる人が多いという。混雑状況を見て「他の店で時間つぶしてからあとできます」といった具合だ。なじみ客にとっては「店が混んでいるとスタッフとゆっくり話せないから」という理由もあるが、「せっかく新規などのお客さんが入っているんだから、そちらを優先にしてくれ」という気遣いも感じさせる。一方で、店側としても「ピークアウトしたあとに来てくれるお客さん」となれば、大いに歓迎できるわけだ。

「店の甘えにもなりますが、こうした使い方をしていただけると店としてもとてもうれしいですね」(豊野さん)

裏返すと、常連客だからといってムダに長居したり、混雑時に大きな顔をしているのは言うまでもなくいただけない。本人は“なじみ客”のつもりだが、店からしてみると、“招かざる客“になっているかもしれないので、注意したい。

なじみの店だからこそ、やってはいけないこと!

なじみ客になったからこそ、店で守らなければならないマナー&ルールがある。先に述べた「なじみだからといって、店で大きな顔をしない」などはまずその筆頭だ。

繰り返しになるが、飲食店にとってリピーターは大切だが、新規顧客はそれ以上に大切なもの。しかし常連が横柄な態度で店員と話し込んでいるような店は、当然敬遠されてしまう。

「大声で話す、歌い出す、寝る……。こういう行為はマナーとして声かけをさせていただいています。常連さんならなおさらですね」(前出・豊野さん)

さらに注意したいのは店の扉が空いたときに、座っている席やカウンターから振り返って、ジロッと「どんな客だ?」と見る行為だ。これもやめておきたい。やるほうは「気になるから仕方がない」のかもしれないが、やられるほうは気分を害してしまう。仮に初めての店だとしたら、いかにも自分を品定めされているような気になる。「常連ばかりいる排他的な店」に見えて、今後足が遠のく可能性が高い。店からしてもはた迷惑。なじみ客こそ振り向きたくても、ぐっとガマンするのがスマートだ。

また、なじみ客同士で仲良くなるのは構わないが、相手がカップル客や女性の2人客などの場合は、会話に割り込むような行為も避けたい。カップルはたいてい二人の時間を過ごしに来ている。当たり前のことだが、そこにムリに横ヤリをいれるのは、マナー違反というより野暮だ。

飲みの席でのマナーはあげ出すとキリがないのだが、本当にいい店でなじみ客になれば、そこで人生の先輩たちと知り合い、コミュニケーションも磨かれる。酒の飲み方やそのマナーに関しても教わることができるはずだ。食育ならぬ「飲育」を受けられるのも、なじみの店のメリットかもしれない。酒の楽しみと深みが増すに違いない。

さあ、さっそく今夜あたり、なじみの店探しへと繰り出してみてはいかがだろうか?

箱田 高樹 カデナクリエイト

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はこだ こうき / Koki Hakoda

1972年新潟県生まれ。江戸川大学社会学部卒業後、カデナクリエイト入社。ビジネスマン向けの媒体を中心に執筆・編集を手掛ける。著書に『カジュアル起業~"好き"を究めて自分らしく稼ぐ~』、共著に『図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書』『クイズ商売脳の鍛え方』など。最新著に『課長・部長のための労務管理 問題解決の基本』(カデナクリエイト他著・マイナビ出版)。

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