衝撃事実!トランプの「暴言」は演技だらけ? ウケるための「必死の工夫」を検証する

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彼の大統領選への挑戦は、このときから始まっています。ぽっと出の大統領候補だと思っている人が多いですが、1988年からずっと大統領選を視野に入れてきた人です。長いですよ、かなり。

その後、トランプは2000年の大統領選挙に出馬しようとしました。このときは、ロス・ペローという大金持ちが作った、改革党という第三党から立候補しようとしました。

当時、改革党には、トランプ以外にパット・ブキャナンという人が大統領に立候補していました。彼は共和党のリチャード・ニクソンのスピーチライターだった人です。

パット・ブキャナンはキリスト教徒の白人の権利を守れと主張していて、「メキシコ系をたたき出せ」と言っていました。つまり今のトランプと同じです。

ところが当時のトランプはCNNなどの取材で、「パット・ブキャナンはレイシストだ。あんなことを言ったらメキシコ系の支持を失う」と言っているんですよ。つまり、16年前のトランプは今のような差別的な人じゃなかったんです。

さらにトランプはこうも言っています。「私はブルックリンで低所得者の移民の人たちと仕事をしていました。ニューヨークにはいろんな人がいて当たり前。だから、差別的な発言は不快だね」と。

しかし、パット・ブキャナンが改革党の中で圧勝してしまいました。負けたトランプは、「White Grievance(白人の不満)」がいかにアメリカにたまっているのかを知ったのでしょう。「オレたち白人がアメリカを作ったのに、なんでこんなにみじめなんだ」という、貧困層の白人が抱えている気持ちです。パット・ブキャナン自身も今、「トランプは私の2000年の選挙戦をヒントにしたんだろう」と言っています。

傲慢なリーダーが人気を集める理由

2004年から、トランプがプロデューサーを務める「アプレンティス」が始まりました。これは、トランプの下でビジネスをやりたい人々を競争させるリアリティTV番組で、大人気になります。毎週ひとりずつ脱落させられるのですが、そのときにトランプが言う「You are fired(お前はクビだ)」は流行語になりました。

でも、プロレス好きな人なら知っていると思いますが、「You are fired」は元々WWE(アメリカのプロレス団体・WWFから改称)の決めゼリフなんです。

WWEは、1998年に大ブレイクしました。プロレスの中身は、WWEの会長であり、自身もリングに上がるビンス・マクマホンと、人気レスラーのストーン・コールド・スティーブ・オースティンが労使抗争をするというものです。

雇用者側のビンス・マクマホンが、反逆社員オースティンと、自分のいうことを聞く、あやつり人形のレスラーを戦わせます。最後には、スティーブ・オースティンが、ビンス・マクマホンに必殺技をかけて、やられたマクマホンが痛がりながら「お前はクビだ!」と宣告する。これをWWEは1990年代から2000年代はじめまで、ずっと繰り返していました。

トランプが「アプレンティス」で「お前はクビだ!」を流行らせると、ビンス・マクマホンは「あれは俺のパクリだ!」と指摘して、2人は抗争になっていきます。もちろん、アングル(遺恨ドラマ)ですが。

2人は2007年にリングの上で決着をつけます。「バトル・オブ・ザ・ビリオネアズ(億万長者の対決)」というイベントで対決したのです。すごく馬鹿馬鹿しいですよね(笑)。しかし、今トランプがやっていることは、この延長線です。

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