ファンケル、サプリ「巻き返し戦略」の勝算 カギは消費者へのアピール力か

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これらの要素を踏まえて、今回のサプリ事業の再構築に乗り出したファンケル。メインターゲットと定めたのは中高年層だ。「体調に不安を感じ始める年齢の顧客に、きちんと寄り添うような商品、接客を提供していく」(ファンケル ヘルスカンパニー 営業企画部の植松宣行部長)。

新製品としては、水溶性のビタミンがより長く体内にとどまるようにした「ハイグレードビタミン」(約30日分120粒2500円)、独自の微細乳化製法を用いて体への吸収性を高めた「還元型コエンザイムQ10」(約30日分90粒3980円)などを投入。いずれも成分の持続性や吸収性を高める機能を付加した製品で、価格も従来品の2倍以上。低価格を追わないという路線は変えず、独自の成分や製法に磨きをかけた。

会報誌に明確な解はなし

ただし現状、アピール力の強化という点には不安が残る。パッケージ上で他社製品との違いを強調するなどの手は打っているが、大きな顧客接点である会報誌の在り方については、試行錯誤をしながらも明確な解を出せていない。テレビや新聞で大々的な広告宣伝に打って出る予定もないという。

事業刷新直前に、にわかに供給面の不安も浮上した。ファンケルは3月15日、目玉新商品の一つであったサプリメント「グッドエイジPSG」の販売中止を発表。既存会員への試供品販売で注文数が想定を大きく上回ったため、「継続的な摂取をおすすめしている以上、供給体制に不安がある状態で販売することはできず、いったん引くことを決断した」(植松氏)。

同製品の主要成分抽出には高度な技術を要するため、大量生産に向けてはもう一段の効率化が必要だという。中高年の生活に「寄り添う」ことを掲げる以上、顧客に不安を抱かせない、安定的な生産・供給体制の構築が必須だ。

サプリメント事業の巻き返しに向け、新たな船出を迎えたファンケル。その道程には不安要素も漂っている。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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