ダイドー、9期ぶりに飲料販売が伸びたワケ 「コーヒー旋風」の追い風だけではない

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ダイドーの強みは、コーヒー比率の高さだけではない。販路別に見ると、自動販売機での販売が全体の84%を占める(2016年1月期時点)。これも飲料メーカー大手の平均である約30%(ダイドー調べ)に大きく水をあけている。

一般的に、自動販売機は他の販路よりも好採算だ。スーパーやドラッグストアに比べて値下がりのリスクが低く、粗利を確保しやすいためだ。

ただ、個人商店が減り設置できる場所が減ったことや飲料市場の成長鈍化で、業界全体の飲料自販機台数は250万台程度で頭打ち。さらに2014年4月の消費増税の際、多くの自販機が10円の値上げを実施。1円単位の小刻みな価格設定ができる量販店との価格差が拡大したことで、消費者の”自販機離れ”が進み、1台当たりの売上高も伸び悩んでいる。

スマホと連動し、ポイントが貯まる

ダイドーの自販機台数も、ここ数年28万台で横ばいが続いている。だが、不採算の自販機を撤去する一方、オフィスや工場など定期利用者の多い場所での設置台数を増やすなど、テコ入れに取り組んできた。

自販機1台当たりの売上高向上にも腐心している。「Smile STAND」と名付けた新型自販機を展開。スマートフォンのアプリと連動し、購入するたびにポイントが貯まり、懸賞に応募できるというサービスを4月から始めた。”買って飲む”だけにとどまらない体験を提供することで、利用者の囲い込みを図る。

キリンビバレッジとの製品相互販売も、一定の成果を生み始めた。ダイドーの「世界一のバリスタ」と「ダイドーブレンド」をキリンの自販機で、キリンの「午後の紅茶ミルクティー」と「同レモンティー」をダイドーの自販機で相互販売することを4月から開始。ダイドーとしては、自社製品の販路が広がっただけでなく、キリンの看板ブランドを迎え入れたことで、自社自販機の売り上げ増につながっている。

一連の取り組みにより、ダイドー単体の上期の飲料販売部門(連結売上高全体に占める比率が約70%の主力部門)は、これまで8期続けて減収だったが、この2017年1月期の上期に前年同期比4.1%増と、9期ぶりにプラスに転じた。

ダイドードリンコの高松富也社長。成長計画の達成に自信(8月29日の決算会見)

ダイドーは上期の業績が期初計画を大きく上回ったが、通期の業績予想は据え置いた。上期に予定していた自販機向けのIT投資が下期にずれ込むことや、来期以降を見据えた広告投資を積み増すことが理由だという。とはいえ、市場拡大の波に乗り、コーヒーの販売好調を維持できれば、通期業績の上振れも濃厚となってくる。

2019年1月期までの中期経営計画では、営業利益率を前2016年1月期の3.3%から、4%以上に高めることを目標に掲げる。高松富也社長は「達成は確実なものだ」と自信をのぞかせる。“自販機で稼げる”飲料メーカーに向け、ダイドーの挑戦が続く。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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