会社組織とは「男vs男」の官能劇場である 上野千鶴子さんが語る「女の処世術」

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就活中の学生には、「仕事は、おまんまのタネだから」と言い聞かせてます。だから、他人に役に立つスキルを身につけなさい。就職活動でも、好きな事を夢中になってやりました、と言っても面接官にはウケない。なぜなら、それは、あまりに当たり前だから。むしろ、好きでないことにどう取り組めるか、のほうを面接官は知りたいんじゃないかしら。

私だって、好きなことだけやってきた、というわけではないのよ。あくまで仕事はメシの種にすぎない。長年、大学の教師をやってきました。なりたくてなったわけじゃない、他に能がなかったから。それに、養ってくれる人がいなかったから(笑)。

研究職と教職とは違います。研究には生きがいを感じましたが、それとは別に、ひとりの教育労働者として、教育サービスを提供してきました。ときにはサービス残業までして(笑)。教師は、おまんまの種。でも、給料分は働いてきたつもりです。

とはいえ、いざ社会に出て働いてみると、男に有利なルールでの競争を強いられていると感じている女性も多いはず。その諸悪の根源は、男性の働き方なんです。家事や育児といった責任を免除されて、すべての時間を会社に捧げて働くのが当たり前、というのが日本の会社の伝統でした。そこに女が合わせて頑張るのは無理です。

男仕立てのルールのまま、かかってこい、おんなじルールだ、とおじさんたちに言われても、そもそも負けが込んでる戦いだって、私は昔から言ってました。雇用機会均等法は、必ずしも女性にとってありがたいものではなかったわけですね。

はなから期待してない、けれど、それでいいの?

いまの時代、女性は結婚しても、働き方やライフスタイルは変わりません。劇的に変わるのは、出産をしてからです。

私のところに、卒業した東大女子たちが遊びにくることがあります。社会人になるととても忙しいから、暇になったとき、すなわち、育休のときに乳飲み子を抱えてくるの。彼女たちがしゃべる内容は決まっています。夫への愚痴と悪口。「夫が、夜遅い」「夫が働き方を変えない」「自分だけにすべての負担がかかってくる」。

一方で、彼女たち自身が、会社で育休取るのが大変だったから、男性である夫が育休を取るのはもっと大変だという「理解」と「同情」もある。だから、夫を育児戦力としてはなから期待してない。

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