プロ伝授「スーパーでおいしい肉を買う」コツ 「と畜」から1日でも多い日数の肉を選ぼう

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そこで個体識別番号を調べて、1日でもと畜日から長いものを選ぶというのがひとつの手だ。私としては、スーパーならばと畜してから30日程度の肉が程よいと思うが、一般のスーパーだと14日より早い段階で売るところが多いようだ。そうした肉は、きれいではあるが味や香りは乏しい可能性があるので要注意である。ちなみに、熟成期間が短いからといって、一度スライスした肉を自宅冷蔵庫で置いておいても、熟成はせず腐敗していくので、買ったらすぐに食べること。

いかがだろうか、今まで存在は知っていたけれども、個体識別番号を検索して、その牛の肉に思いを馳せたことがないならば、ぜひトライしていただきたい。ただし、今回は出生日からと畜日まで、そしてと畜日から購入日までという単純な数字のみに着目した。これは初歩の初歩であって、牛肉のおいしさに関してはもっと複雑な要素が折り重なっている。あくまでこれは基本だと考えていただきたい。機会があればまた、牛肉のおいしさの見分け方についてわかっていることをお伝えできればと思う。

気になった牛肉の個体識別番号をメモする

読者の皆さんには今後、「A5」やブランド名に惑わされるのではなく、ぜひ「おいしさ基準」で肉を見ていただきたいと思う。とはいっても、それは体験して取捨選択できるようになるしかない。そのためには、飲食店などで「おいしい!」または「まずい!」と思った牛肉の個体識別番号をメモして、あとで調べるといったことをするとよいかもしれない。

それと重要なのは、販売店に対して「こないだのあれはおいしかった」「脂がくどかった」というような評価をきちんと伝えることだ。何も言わなければ「消費者は喜んでこれを買っていった」と思うだけだ。消費者の感想は何よりも強い。ぜひ、あなたがおいしいと思う牛肉について、流通側に伝えてほしい。そこから、おいしい牛肉が出回る社会が創られるのだ。

山本 謙治 農畜産物流通コンサルタント&農と食のジャーナリスト

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やまもと けんじ / Kenji Yamamoto

1971年、愛媛県生まれ埼玉県育ち。学生時代にキャンパス内に畑を開墾し野菜を生産。大学院修士課程卒業後、大手シンクタンクに就職し、畜産関連の調査・コンサルティングに従事。その後、花卉・青果物流通業を経て2004年に(株)グッドテーブルズ設立。農業・畜産分野での商品開発やマーケティングに従事する。その傍ら日本全国の佳い食を取材し、地域の郷土料理や特産物を一般に伝える活動をしている。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」のほか、『激安食品の落とし穴』(KADOKAWA)、『日本の「食」は安すぎる』(講談社プラスα新書)など著書多数

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