日本株は上昇後、嵐に見舞われる危険がある 「米国の利上げ=円安株高」は長く続かない

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これにより、9月2日に発表される8月の米雇用統計は、今以上に注目されることになった。

「雇用の最大化」と「2%の物価上昇」という「ダブルマンデート」(2つの命題)を抱えるFRBにとって、雇用統計で弱い数字が出ることは論外だ。しかし、大統領選挙という大人の事情を抱えるイエレン議長にとっては、強すぎる雇用統計も歓迎しにくい状況だといえる。

結局、イエレン議長は9月に動く可能性も?

ジャクソンホールでのイエレン議長の講演によって利上げを意識させられた金融市場は、雇用統計の内容が強いものになった場合、急速に利上げを織り込みに行く可能性が高い。

「利上げは経済指標次第」と明言したイエレン議長にとって、強い雇用統計が出る中で利上げを先送りするという判断は取り難い。その理由を明確に示すことが難しい上に、万が一その後発表される雇用統計が8月よりも弱い内容になった場合、11月のFOMC(米公開市場委員会)で利上げの正当性を示すことが難しくなり「金利の正常化」に失敗するリスクがあるからだ。

つまり、8月の雇用統計が強い内容になった場合、大人の事情を抱えるFRBも、結局は利上げに動かざるを得なくなる可能性は否定できない状況にある。

その雇用統計は、過去2カ月の非農業部門雇用者数が6月+28.7万人、7月+25.5万人と、8月の統計が市場予想の+18万人であった場合3カ月平均で+24万人に達し、好調の目安とされる+20万人を大きく上回る状況にある。

今回のイエレンFRB議長の講演によって市場が織り込む利上げ可能性は上昇したが、まだメインシナリオは12月利上げであり、9月利上げ可能性は上昇したものの33%に留まっている。

市場が12月利上げ説をメインシナリオにしているのは、「利上げは段階的であるべき」というイエレンFRB議長の発言を拠り所に、もうしばらく「堅調な経済成長下での低金利」という最高の投資環境を享受したいと願っているからだ。しかし、僅か+5.8万人で3か月平均+20万人を達成する状況の中で33%という数字は低過ぎるともいえる。

雇用統計の内容によって市場が急速に利上げを織り込み、FRBが市場の描くメインシナリオよりも早く利上げに踏み切るというシナリオも念頭に置いておくべきだろう。

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