金融政策だけで「デフレ脱却」はできない 池尾和人・慶応義塾大学教授に聞く

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──これからの焦点は、3本目の矢(成長戦略)に移ります。

金融政策や財政政策がうまく機能したとしても、基本的には時間を買う政策だ。これまで何度も時間を買ってきたが、買った時間を浪費するのがこれまでの日本の基本パターンだった。機動的な財政出動を行い時間を買う余裕が、まだ日本にあるのか、という思いもあるが、仮にうまく時間を買えたとしても、次は日本の成長力をどう引き上げていくかという問題に直面する。

ここに即効性のある話はなく、労働市場改革など、辛気くさいことを我慢強く続けていくしかない。

その点、今年7月の参議院選は焦点になる。参院選後に安定した政権ができて、国民に我慢を求めることを言えるようになるのか。あるいは、かつての自民党型の政治に回帰するだけなのか。そこには注目したい。

──日本のデフレ脱却には?

それは、地道なことを辛抱強くやり続けるしかない。ただ、経済政策は国民の納得がないと実現できない。経済学の論理で「この処方箋は正しいから実行しなさい」といくら言っても、政治が国民を納得させ引っ張っていかないと、前に進まない。

その意味で目に見える成果を出していくことは重要だ。その限りで私はアベノミクスを全面否定しているわけではない。もっとも、一か八かの賭けに打って出るしかないような状況に日本経済が追い込まれているとも思えないので、もう少し経済政策は慎重に進めるべきだとは思っている。また、そもそも金融政策だけでデフレから脱却できるかのような議論については、そこは信念を持って間違いだと主張したい。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2013年3月23日号)

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