生クリームのような豆乳、あらわる 不二製油が新製法、乳製品市場にも斬り込む

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USS製法は、生乳を分離し乳製品の「脱脂乳」と「生クリーム」とを生成するのと同じ遠心分離に加え、親油性タンパクを利用した独自処理を経ることで、大豆本来の香気を保ったまま、これまでにない滑らかさを実現することに成功している。

量産化を担当した西村隆司・蛋白食品カンパニー豆乳開発室長は、「テーブル実験からプラントに移行する際に困難は付きもの」とあくまで謙虚。ただ、「乳業用など、今までにまったく使ったことがない機械を利用したため、新しい機械に合わせる工夫は大変だった」と、これまでにない製法への挑戦に苦しめられた姿を垣間見せた。

大豆事業は8年後に6倍の規模目指す

不二製油の大豆事業を取り巻く環境は、昨年の干ばつの影響で大豆価格が高騰したところに円安に見舞われ、厳しさが増している。さらにこれまでの大豆事業の核はハムや練り製品に加える大豆タンパクだが、これらは海外との競合が激しくなっている。このため今2013年3月期の大豆事業は、前期比20%減の16億円程度と軟調な展開となりそうだ。来期もこの状況は変わらず、このままでは大きな伸びは期待できない。

そこで次期社長に内定している、清水洋史・専務・蛋白加工食品カンパニー長は「USS製法を軸として大豆事業の原点に回帰する」と宣言。21年3月期には、大豆事業だけで営業利益を100億円にまで拡大すると豪語する。

チーズやバターなどを含めると、乳製品の関連市場は2兆円超。一方、大豆・豆腐市場は3000億円強にとどまる。USS製法で作り出した低脂肪豆乳と豆乳クリームをテコに、豆乳の用途を拡大することで乳製品市場に斬り込むことはできそうだ。

これらはこの3月から食品メーカーへの供給を本格的に開始する予定で、販売先もほぼ確定。「滑り出しとしてはまずまず」(広報)だという。

ただ、残念なことに、不二製油は小売店への販売ルートを持っていない。このためGMSやスーパーなど、小売店の店頭では不二製油の低脂肪豆乳、豆乳クリームという商品を直接、目にすることはできない。つまり、消費者は、食品メーカーが低脂肪豆乳、豆乳クリームを使った商品しか手にできない。一消費者としては「将来の課題」(広報)である小売りを、ぜひとも早く実現してほしいと思う。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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