“WBC最強打線” ドミニカ強さの秘密 現地取材で探る、メジャーリーガー輩出工場の全貌

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アメリカ人によって、ドミニカに野球が伝えられたのは19世紀の終わり。以降、人々はその魅力に取り憑かれた。1997年から西武と巨人で5年間プレーし、現在はドミニカで中日のスカウトを務めるドミンゴ・マルティネスによると、「ドミニカで野球以外のスポーツをする少年は皆無に等しい。みんな、物心がついた頃から野球を楽しんでいる」。

第1回WBCでドミニカ代表の監督を務めたマニー・アクタが創設したリーグ戦では、毎週土曜に300人の少年がプレー(撮影:龍フェルケル

123年の歴史を誇る地元紙『リスティン・ディアリオ』で39年間健筆を振るうエクトル・クルス記者によると、「ドミニカで男の子が生まれてきて、最初にするスポーツは野球。バスケット、体操の人気も上がってきているが、すべてのアスリートがまずは野球をプレーする」という。

ブラジルの少年が路上でサッカーボールを蹴って上手くなるように、ドミニカの少年には誰もが野球をする環境があるのだ。ちなみに、近年はドミニカでもサッカーをする少年の姿がちらほらと見られるようになってきたが、そのほとんどが中流階級以上の息子だという。

ドミニカがケイマン諸島である理由

ドミニカを取材して驚かされたのが、至るところに野球グラウンドがあることだ。もっとも、日本のように整備されたフィールドではなく、ボコボコの土の上に雑草が生えているのは当たり前。前述したような砂利のグラウンドや、傾斜があるフィールドも珍しくない。1年中燦々と輝く太陽の下、少年たちはプレーできる場所があれば、どこでも白球を追いかける。

そうした環境に目を付けたのがMLBだった。1950年代からドミニカ人選手の発掘を開始し、現在では全30球団のうち28球団がアカデミーを開き、ダイヤモンドの原石を磨き上げている。

では、中南米にはベネズエラやメキシコ、プエルトリコなどほかにも野球の盛んな国があるなか、なぜ、MLBのアカデミーはドミニカに一極集中しているのか。その答えこそ、「ドミニカがケイマン諸島である」理由だ。

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