岩手の「極上ウニ」は、食べているエサが違う 海底のワカメやコンブが重要な意味を持つ

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「きれいな海と天然のワカメやコンブをエサにして育つ洋野町のウニは、濃厚な旨みが特長です」と教えてくれたのは、最初に訪れた角の浜漁港で迎えてくれた種市漁業協同組合の大村文雄さん。

ウニの品質を決めるのに、“ウニのエサ”は重要だと大村さんはいう。

ウニは雑食性であらゆるものを食べてしまう性質をもつため、自然のなかで育つウニは環境によって味に大きなバラツキが出やすくなる。しかし、洋野町のウニは草原のように海底に広がるワカメやコンブをエサとすることで、たっぷりと旨みの詰まった良質なウニが育つという。

角の浜漁港では、早朝からキタムラサキウニの殻剥き作業が始まっていた。

ウニの殻剥きは口の部分から殻を開け、ピンセットを使って黒いワタ(内臓)やワカメのカスをひとかけらも残さず、素早く取り去っていく。この一見、単純にも見える作業は、非常に手間がかかるうえ、剥き身に傷がつかないように丁寧に処理しなければならず、熟練した技術が必要な作業だという。

「こうした人の手による加工技術も含めて、洋野町のウニは世界一だと思っています。世界に誇れる海と技術を未来にむけて継承していきたい」と、大村さんは語ってくれた。

天然コンブだけで育つ極上のウニ

もう一つ、洋野町で良質なウニが育つ理由が、約45年前からまちぐるみで取り組む「稚ウニの育成」と「ウニ牧場(増殖溝)」の仕組みだ。

地元で水産卸業を手がけるひろの屋の代表取締役、下苧坪之典(したうつぼ ゆきのり)さんはこう話す。

「洋野町は、ほかの三陸沿岸のまちと違って波の荒い外洋に面しています。そのため、漁が天候に影響されやすく、安定しないという悩みがありました。当時のまちの人たちが、より安定的な生産活動ができないかと模索するなかでヒントにしたのが、ここの浅瀬です。浅瀬には10数kmに渡って岩盤が広がっていたことから、その岩盤を削って深さ3mほどの溝を無数に掘り、ウニのエサとなる天然コンブを増殖させてウニの生息地をつくっていきました。それがいまも、世界には類を見ない『ウニ牧場』として受け継がれています」。

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