国債の大規模購入と財政政策の危険な関係 米国でもリスクを警告する論文が話題に(日銀ウォッチャー)

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しかしながら、そういった景気回復ムードに、FRBが超金融緩和策の長期化を市場に約束してきたことが相まって、米議員らが心配するように各所でユーフォリア(酔狂)が起き始めている。財政の歳出削減から来る景気下押し圧力は存在し、失業率の水準はまだまだ高いのにそれらは忘れられており、株式市場では強気の見方が広がっている。

FRBの中からも懸念が現れており、シュタイン理事は2月上旬にクレジット市場の過熱を心配する講演を行い、高い関心を集めた。金融危機を予言したと言われているニューヨーク大学のルービニ教授も、3月上旬にバブルを警戒するコメントを発し始めた。

FRBの今後の期待のコントロールは難しい。適度な“ガス抜き”ができれば最も望ましい。そうでない場合、来年1月末に退任すると見られているバーナンキ議長は「勝ち逃げ」となっても、後任議長(イエレン副議長か?)が困難に直面する恐れがある。

かつて、ボルカーからグリーンスパンに議長が引き継がれた年にブラック・マンデーは起きた。グリーンスパンからバーナンキに代わってしばらくしてサブライム問題が火を噴いた。新議長に交代すると前の議長の時代に累積した問題が表面化してくる傾向がある。それは日本経済にも打撃となり得るだけに、注意が必要だろう。

基金と”輪番オペ”の統合には問題がある

黒田氏率いる新日銀は、当面は白川体制よりも期間の長い国債を大規模に購入して、インフレ期待を押し上げようとするだろう。リスク資産の購入も拡大すると予想される。しかし、日銀に損失が発生したらそれは納税者負担となるため、拡大は限定的だろう。

外債購入オペは、1)実施しないようにと海外の主要国から釘を刺されていること、2)黒田氏自身、外為政策は財務省の管轄だと考えていること、から選択されない。超過準備への付利の撤廃は、銀行が日銀から資金を借りる動機を弱め、マネタリーベースの供給量が減る可能性が高い。「日銀バランスシート膨張のイリュージョン(錯覚)」を利用する金融緩和策に対しては、付利の撤廃は逆効果となる。

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