「ヒラリー支持者」が急増している4つの要因 共和党員が続々とトランプから離れている

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4つ目にはトランプの経済政策が、厳しい批判にさらされていることがある。同氏が5日に発表した13人の経済顧問はすべて白人男性のうえ、ほとんどがヘッジファンド・マネジャーや投資家と、一般的な労働者の男女を代表しているとは言い難い。顧問には、米国人の多くが家や仕事を失った2007~2008年の不動産市場の暴落で40億ドルも儲けたジョン・ポールソン(1970年代のハーバード・ビジネス・スクールでの筆者の同級生)も名を連ねている。こうした裕福な経済顧問たちが、有権者が求めるウォール街や金融機関の規制強化や、所得や富における不平等の改善といった問題について前向きに検討するとは考えにくい。

実際、トランプが8日にデトロイト・エコノミック・クラブで発表した経済政策はこれを裏打ちするもので、富裕層向けの巨額の減税政策を含むものであった。一方、同じ会場で3日後に発表されたクリントンの経済政策は2750億ドルのインフラ投資と、グリーン・エネルギー投資を含むもので、こちらのほうがより大きな期待感を持って受け止められた。

激戦州で支持が拡大支持

クリントンが優勢とみられる最後の理由が、党大会後同氏の支持率が激戦三州(アイオワ州、オハイオ州、ペンシルベニア州)で拡大していることだ。アイオワ州では、7月時点で42%対39%だったクリントンとトランプの支持率は、8月に41%対37%となった。オハイオ州では、7月時点で支持率は同率だったのが、8月には5ポイントの差を広げた(43%対38%)。また、ペンシルベニア州でもリードを9ポイントから8月の11ポイントに広げている(48%対37%)。

「安泰」に見えるクリントンだが、同氏も不安材料を抱えている。

一つは、クリントン陣営の進歩派が、多くの共和党員がクリントン支持を表明していることを受けて、政策がより保守的になるのではないかと懸念していることだ。こうした懸念を抱くのは、最低賃金を時給15ドルまで引き上げることや、オバマケアの範囲拡大、低所得世帯の大学授業料無償化といった政策をクリントンに受け入れさせたと考えている、サンダース支持者たちである。前述の共和党の国家安全保障専門家50人によるクリントン支持も、同氏がより外交政策においてタカ派に傾くのではないかという懸念につながっている。

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