「レールガン」とは一体どのような兵器なのか 200キロ先へ弾丸を飛ばす電磁兵器の威力

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そして、レールの間に弾を挟んで接触させた状態で大電流の電力を送り込む。すると、レールと弾が接触している部分で、磁場の相互作用によって弾を推進する力が発生する。要約すると「火薬の力ではなく、電力によって発生させた磁場の力で弾を投射する」のがレールガンである。

米軍でレールガンの開発を主導しているのは海軍で、研究部門・ONR(Office of Naval Research)が開発に乗り出したのは2007年のことだ。まず、その概要をみておこう。

米軍におけるレールガン開発の歴史

当初、レールガンの開発にはゼネラル・アトミックス社がかかわっていた。同社は、米海軍の新型空母「ジェラルド・R・フォード」に搭載する電磁カタパルト(EMALS : Electromagnetic Aircraft Launch System)も手掛けている。しかし現在、レールガンの開発において中心的となっているのはBAEシステムズ社だ。

レールガンに限ったことではないが、こういった新種の兵器を開発する際には、まず小型で性能が低いものを試作して研究とテストを重ねて、段階的にスケールアップするのが一般的だ。レールガンもその例に漏れない。

まず2008年1月31日に、10.68MJ(メガジュール)のエネルギーを発生させてアルミ製の弾体を発射する試験を成功裏に実施した。電力量の単位として見た場合、1秒間に1W(ワット)の電力を消費したときの電力量が1ジュールだ。10.68MJとは、その1068万倍である。この試験で発射した弾の飛翔速度は秒速2500m(9000km/h)だったという。

弾のサイズや重量が小さくても、高速で撃ち込めば相応の破壊力を発揮する(写真:Official U.S. Navy Page)

2008年の時点で米海軍が掲げていた最終目標出力は64MJだった。つまり試射に使用したレールガンの6倍ほどになる。そして、目標射程は200ノーティカルマイル(約370km)に設定していた。一般的な火砲で、こんな高い弾速と長い射程を実現したものはない。なお、2010年12月には出力33MJを達成している。

そして、2009年2月にBAEシステムズ社に対して、プロトタイプ1号機の詳細設計契約を30カ月・2200万ドルで発注した。その後の2012年10月に、プロトタイプ2号機を使った試験を実施したことをONRが明らかにした。

続いて、2013年7月にプロトタイプの第二次契約を3450万ドルで発注した。第二次契約では発射機の熟成を図るとともに、それまでは単射しかできなかったものを、連続発射が可能なものに発展させるとしていた。さらに、自動装填装置と熱管理システムを組み込む計画も盛り込んだ。

こういったレールガン本体の開発と平行して、BAEシステムズ社に対しては2009年以降、コンテナ型発射機の研究開発契約や、使用する弾に関する研究開発契約も発注した。

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