「言い訳させない上司」は成果を上げられない 部下とのその距離感、大問題です!

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そして富安自身が管理監督者になった時、かつての上司の言葉を胸に、常に笑顔でいることで相談されやすい雰囲気づくりを心掛けていました。糖尿病でドクターストップがかかった部下と一緒に産業医のアドバイスを受けて、食事計画の作成までやった経験もあります。

トヨタの管理監督者は、24時間365日体制でトラブル対応をしています。夜間や休日の電話は99%の確率で大きな問題が発生した証拠。トヨタを退職し弊社のトレーナーになった時、「夜間や休日の電話を気にしなくていいのが、一番嬉しかった」と口をそろえて言うほどです。このようにして管理監督者が直面するのは、仕事の問題だけではなく、先ほどの富安の例にもあるようなプライベートの問題も多く含まれています。

その背景には、「温情友愛の精神を発揮し、常に家庭的美風を作興すべし」という家庭的チームワークを重視するトヨタの風土もありますが、日常から密な人間関係を築いて細かい情報を察知しておくことで、問題の拡大を防ぐという狙いもあります。

上司に対してモノを言いやすい職場は、さまざまな利点があります。たとえば 「○○さんは最近、家族の介護問題で悩んでいて元気がない」という情報が入ってくれば、相談に乗ったり仕事の負荷を軽くしてあげるという工夫もできます。それは、結果的に問題の芽を事前に摘むことにつながるのです。

実際に問題が発生した際にも、ストレートに理由を聞くことができます。そうすれば、当事者も前向きに真因追究に取り組むことができるのです。

目線は相手にあわせ、「言い訳」も聞いてあげる

上司が難なくできる仕事を、部下がスムーズにできるわけではありません。相手のレベルを見極めずに仕事を振ってしまうと、失敗を引き起こすことがあります。

森川泰博がトレーナーとして初めて顧客企業を担当した際のエピソードをご紹介しましょう。森川は、先輩トレーナーから「トヨタ目線はNGだぞ」と言われていました。顧客企業とトヨタは規模も環境も異なるため、トヨタと同じようにはできないのは当然なのです。しかし、トヨタで約40年、定年まで働き、トヨタしか知らない新人トレーナーは「なぜそんなに簡単なことができていないのか」と思ってしまいがちです。それがわかっているからこそ、先輩トレーナーは森川にアドバイスしたのです。しかし、「そんなことはできません」と言ってきたメンバーに対して、ついに森川はこう言ってしまいました。

「なんでやれないんだ!」

しまったと思ったものの後の祭り。「それはトヨタだからできるんでしょ」と言われ、森川は深く反省したと当時を振り返ります。

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