トヨタ「86」とスバル「BRZ」が似て非なる理由 生まれ持った性格の違いと互いの歩み寄り

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今回、86、BRZのいずれも外観デザインが比較的大きく変更されているのだが、86について、さらなるハンドリングの改善を図るうえで、実は「走りの半分近くが、空力によって支えられている」と開発担当者氏は語っており、空力性能を高めるためのさまざまな要素を造形に落とし込んだのだという。

それはバンパー左右のカナードやノーズフィン、リアスポイラーなど見た目にもわかりやすいものから、一見わからないバンパー下面やグリル内部、フィンを配したサイドのフェンダーガーニッシュやリアコンビランプなど非常に多岐にわたる。

一方のBRZは、実際どのぐらいやっているかはさだかではないが、空力についてはあまり強調していない。両車に乗って感じる違いは、むろんサスペンションセッティングにあまり差がなくなったせいもあるが、空力によるところも大きそうだ。

動力性能については両車共通で、吸排気の抵抗低減やファイナルギアレシオを落としたことで、数値的な性能向上もさることながら、アクセルレスポンスが向上しているのは明らか。

また、ザックス製ダンパーやブレンボ製ブレーキという、魅力的な社外ブランドのアイテムを導入するという新しい試みを行なったのも今回の大変更における大きなニュースだ。これについても、86とBRZにおいて選択できる設定が異なることもお伝えしておこう。

市場が低迷する中、順調な販売数をマーク

86とBRZはスポーツ/スペシャルティ市場が低迷していた国内市場において、そこそこ順調な販売をマークしてきた。トヨタは発売から約4年となる今年7月末までに、国内で累計約5万2700台の86を販売。月間平均にならすと発売時目標の月販1000台をちょうどクリアしている。海外向けには累計約11万3900台を売っており、これも堅調といえる。

86は当初は40~50代の比較的年齢の高い層が購買の中心だったところ、最近では20代の若い層も増えてきているとのこと。また、オートマチックトランスミッション(AT)の販売比率が圧倒的に高い国内市場において、手動でギアを選び、クラッチ操作が加わるマニュアルトランスミッション(MT)比率が約7割に達しているというのも特筆できる。

登場から4年といえば、バブル期までぐらいならフルモデルチェンジしてもおかしくない時間。このタイミングでこうして大きく変わった86とBRZは、モデルライフをまっとうするまで、折に触れてさらなるアップデートを実施していくことだろうが、やはり両車の次期モデルがどうなるのかもますます気になっていく時期でもある。

再びトヨタとスバルによるプロジェクトとなるかどうかもさだかではないし、関係者から漏れ伝わってくるところでは、その可能性は低いという情報もある。ただし、手頃な価格で、適度なサイズとパワーのFRスポーツに目があることは明らかになったので、将来的にもひとつのカテゴリとして定着していきそうだ。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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