「黒田日銀」の金融政策は白か、黒か、灰色か 吉崎 達彦が読む、ちょっと先のマーケット

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たとえて言えば、戦線がこう着状態だ、という理由で先任の白川将軍が首になり、新しい黒田将軍が赴任するなり、兵士たちに向かって「あの城を2年で落とす」と宣言しているようなものである。兵士たちは内心、「2年じゃ無理だよな」と思っているけれども、そこは黙っている。他方、新しい将軍の立場としては、兵士たちの方が現場を知っているのは百も承知だが、ここは立場上、「2年で落とす」と言わないことには始まらない。

2年後、物価上昇をどう計測すればよいのか

そしてまた、「市場とのコミュニケーション」という観点からいっても、ここは少々強気に出る方が得策なのかもしれない。ちょうどバーナンキ議長がやってきたように、「中央銀行にはデフレを解決する責任と手段があるのだ」という強気の姿勢を示す。いわば戦略的楽観論とでも言おうか。

ここで少々の邪推を試みるならば、「2年で2%」というコミットメントには、ちょっとしたギミック(仕掛け)が隠れていそうである。今から2年後、2015年春の消費者物価がどうなっているかといえば、その手前で消費税率が3%上がっているので、一過性とはいえ、その分だけ物価は上がっているはずである。

消費税を3%から5%に上げた1997年にも、ちょうど1年間だけ物価が前年比2%増になっている。しかるに現実問題として、どこまでが増税効果で、どこからが自然な物価上昇率なのかを見極めることは、きわめて困難なはずである。

結論として、日銀という組織は「白から黒へ」生まれ変わることになるだろうが、2年後の結果は灰色だった、てなことになるのかも。ただし、「灰色でも十分な成果だ」とも言える。日銀が目指すべきは正しい金融理論ではなくて、元気な日本経済のはずである。物価上昇率が2%にならなかったけど、1%にはなったというのなら、それはそれで大いに結構なことではないだろうか。

他方、個人的には、いずれ「白川総裁再評価」の時代がやってくるかもしれないと感じている。任期前の3月20日に「勇退」される白川方明さんに、心からお疲れ様でしたと申しあげたい。

次ページさて、週末は阪神大賞典。執筆陣、ついに初勝利へ!
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