被災者医療費免除、宮城で4月打ち切り続出も 宮城・岩手・福島の東北3県で明暗

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医療費免除が打ち切られた場合、何が起こるのか。

すでに中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」では、12年9月末で医療費免除が打ち切られている。そのことを反映する形で、社会保険診療報酬支払基金による宮城県内での診療報酬支払い総額は、すでに10月から前年同月を下回り始めている。特に落ち込みが大きいのが歯科診療で、11月の総額は前年同期比17.4%減。震災前の同月と比べた場合でも、宮城、岩手両県で歯科の診療報酬支払い額は減少に転じている。データを分析した宮城県保険医協会では「受診を手控える動きがすでに起こり始めている」(鈴木和彦事務局長)と見ている。

生活困窮者だけでも支援継続を

同協会が12年11月5日から13年2月5日にかけて、県内の仮設住宅の住民や会員医療機関を受診する住民を対象にしたアンケート調査(回答数1905件)では、免除措置継続を希望する国保加入者や後期高齢者(75歳以上)が9割以上にのぼることが判明している。免除打ち切りを契機に協会けんぽなどの加入者では約5割が「受診回数を控えるようになった」または「受診するのをやめた」と回答している。

津波で自宅を失い、気仙沼市内の仮設住宅で暮らす小野道子さん(68)は、「せめて、母子家庭や仕事が見つからない60代以上の高齢者だけでも免除措置を続けて欲しい。このままでは多くの住民が病院に通うことも難しくなる」と語っている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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