膠着した市場が動き出すのは、いつなのか 注目を集める26日のFRBイエレン議長の発言

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一方、最近は早期利上げの必要性を訴えるFRB関係者が増え始めている。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁などは講演で、「おそらく早期に緩やかな利上げを再開することが理にかなう」と言及している。また、これまでハト派の代表とみられてきたダドリーNY連銀総裁も「早期利上げの可能性は十分にある」としており、利上げのタイミングに対するFRB関係者のスタンスが急速にタカ派に変わりつつある印象が強まっている。

FRBも確固たる自信が持てていない

とはいえ、これらの発言をそのまま鵜呑みにすることはできない。上記の発言の変化は、FRB関係者自身が、これまでの景気判断や政策運営に確固たる自信が持てていないことを示しているともいえる。

政策の透明性が求められる中、ECB(欧州中央銀行)と日銀が市場との対話に失敗している状況にあるため、FRBはこれまでのように、政策の方向性を市場にショックを与えない形で行き渡らせる必要がある。しかし、FRB関係者自身の発言が、その意図を明確に伝えることができていないように思われる。

この点については、筆者には1年前のイエレン議長の発言以来、傾向がより鮮明になっている感がある。

今からほぼちょうど1年前のことだ。金融政策の方向性について、イエレン議長が行った発言をきっかけに、市場が一時混乱をきたした。その後、イエレン議長は体調不良に陥ったとされ、しばらくの間、「表舞台から姿を消す」といった事態に発展した。

実際に体調不良が雲隠れの原因だったかは定かではない。だが、時系列から見ればそのように捉えるのが自然であろう。それ以降、イエレン議長はさまざまな機会において、言質を取られないように慎重に発言することが明らかに増えた。

その結果、FRBが行うべき市場との対話が上手くいかなくなった面は否めない。こうした経緯もあり、26日の講演で、イエレン議長が無理な発言をすることはないだろう。つまり、金融政策に関する明確な方向性は示されないと考えるのが自然である。

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