エイベックス「ヤンキー兄ちゃん支援」のワケ 松浦社長が考えるヒット創出の処方箋

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松浦:もうひとつ、芸能事務所は、絶対に小さい会社のほうがいい。うまくいっている芸能事務所は、ほぼ社長が全部決めるっていうところです。だから、この業界に大企業は少ない。大手芸能事務所もありますが、ほとんどの芸能事務所は10~20人規模で、社長の一言で全部決めていくところが多い。それは、社長がリスクも取るし、攻める時は攻めるっていうことを、その場でパンパンと決めていけているということです。そうでないと、事務所を運営していくのは難しい。

山田:エイベックスのグループ内に小さな事務所を作る、というわけにはいきませんか。

松浦:やっているけれどもなかなかうまくいかない。うちのグループ内に、いくら子会社をつくって社長を任せても、もともとオーナー社長ではないので根本が違う。社内に作るよりも、機動力がもともとある人間を中心に添えた部隊を外にいっぱい作るほうが有効かなっていう感覚を持っています。

全然違うところからライバルが出てくる

松浦勝人(まつうら まさと)/エイベックス・グループ・ホールディングス社長CEO。1964年10月1日生まれ。日本大学在学中に貸しレコード店の店長を務め、1988年にエイベックスを設立。音楽ビジネスを軸とする総合エンターテインメント企業を作り上げた

山田:今の地頭のいい若い人たちは芸能事務所には期待せず、「YouTubeやるぜ」っていう感覚かもしれない。

松浦:全然それでいい。うちの社員は、はじめからそこをやらなかったりする。もっと新しいことに取り組みたいということで最初は入社してくるんですけど、実際は細かい仕事がたくさんある。いろいろなことを経験するうちにゼロから作るという経験をしていなくなってしまうので、発想が古い人間とかが多くなっている。

山田:エイベックスが、すでに古いレガシー(遺産)のようになっているということですか。

松浦:そうです。僕は、ほかの芸能事務所ではなく、全然違うところから全然違う形でライバルが出てくるだろうなと思います。

ただ、芸能界への参入障壁が高いし、力をつけていくのは厳しいので、そこを僕らが助ける役割はできるかもしれない。

山田:それだけ芸能界は閉鎖的だ、と。

松浦:そのような一面もあると思います。あとはリスクについても面倒をみることができる。数多くのタレントを現在も扱っていますから、どんな事故があるかもわからない。そのようなときの対応も手助けできると思う。

山田:ヒット創出の施策として「海外展開」も掲げています。これは難しいテーマですし、短期的なテーマではないですよね。

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