『ハゲタカ』の監督、管理社会へ警鐘鳴らす 大友啓史監督に聞く(上)

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人気ミステリー作家の東野圭吾が、「映画化を前提に小説を書く」として、執筆が進められた『プラチナデータ』。執筆が難航し、書き終わるまでに3年半の歳月を要した作品が、ようやく映画化、3月16日から全国東宝系にて公開される。
日本国民のDNAデータを国家が集めることで、当局の犯罪捜査に威力を発揮すると共に、究極の監視社会を築く――。そんな、今にでも行われそうな設定と思いもよらない展開が、観客の心をスクリーンに引き付ける。
主人公で、DNA捜査システムを開発した天才科学者・神楽龍平に二宮和也。そんな彼を追う警視庁捜査一課の主任警部補・浅間玲司を豊川悦司が演じる。ほか、鈴木保奈美や生瀬勝久、杏、水原希子、遠藤要、萩原聖人らが脇を固める。
この映画のメガホンを握るのは大友啓史監督。社会派ドラマ「ハゲタカ」や大河ドラマ「龍馬伝」の演出などで、テレビドラマの世界に新機軸を打ち出した風雲児でもある。そんな監督に、『プラチナデータ』に込めたテーマ、作品作りに懸ける情熱を聞いた。

――東野圭吾さんが書かれた原作を最初に読まれてどういう印象を受けましたか。

「究極の個人情報であるDNAが、政府や警察組織によって個人の性向を含むすべてを把握するために使われる」という、その怖さがジリジリと通奏低音のように響いてきた。東野作品なのでエンターテイメントとしても純粋に面白いが、一方、現実の中で、すでにそんなことが検討され、実現に向けて動いていてもおかしくないと思わせるリアリティもある。個人情報が、いろいろな形で世に流通している時代ですからね。

現代社会は「多重人格社会」?

今の若い子も含めて多くの人は、ネットショッピングなども当たり前になってきている。でも便利になる一方で、落し穴は確実にある。購入した結果、その履歴を通じてその人にお勧めの商品が送られてきたり。それは自分の嗜好を他者に決められていることでもある。作品を通して、現代社会の構造そのものと、そんな社会が可能性としてはらんでいる「主体性の喪失」という根本的な問題にたどり着けるのではと考えた。

それと、デジタルとアナログ。デジタルとアナログというのは、平たくいうと1かゼロの世界ですよね。二宮和也君が演じる神楽龍平は「龍平」と「リュウ」という2つの人格を持っている。多重人格というと特別なことと思われがちだが、複雑な現代社会で生きていくにはある種必要なこと。家庭ではよきお父さんが、外では鬼のような人だったり。付き合う相手の立場や社会的地位によって、いくつもの顔を使い分けなければ、人は生きていけない。

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