日本ペイント買収劇、“白紙撤回"の先 提案取り下げたシンガポール社との関係、攻守交代へ

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結局、得をするのは日本ペイントか

日本ペイントの買収をあきらめたウットラムだが、引き続き日本ペイントとのアジアの合弁事業を通じた協業関係は続ける。日本ペイントにとっては、このアジアの合弁事業を連結化していくことが、今後のテーマとなる。持分法適用関連会社では、アジアの成長の恩恵をグループとして十分に享受することはできないからだ。

ウットラムとの合弁事業で、日本ペイントの出資比率が50%未満の持分法適用関連会社は9カ国・地域にまたがる。これら持分会社の12年度の売上高合計は1660億円弱。一方の日本ペイントの今13年3月期の売上高見通しは2330億円。合弁事業を単純に連結化していくだけで、今期2900億円の売上高を見込む国内トップの関西ペイントをあっさりと抜き、世界の塗料メーカーにも引けを取らない規模となる。

もともと日本ペイントは15年度には世界のトップメーカーと互角に渡り合うとする、超強気の中期経営計画を立てていたが、日本ペイントの主力は国内向け、なかでも自動車関連が太宗を占める。今後、大きく収益を伸ばすには、海外、特にアジアの成長を取り込むことは最重要課題でもあった。ウットラムとの合弁事業をどれだけ連結化できるかが、大望に近づくカギとなる。ウットラムとの関係は「攻守交代」の局面を迎えることになる。

岸本 吉浩 東洋経済 記者

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きしもと よしひろ / Yoshihiro Kishimoto

1996年東洋経済新報社入社。以来各種企業調査にかかわる。『CSR企業総覧』編集長として、CSR調査、各種企業評価を長年担当。著書に『指標とランキングでわかる! 本当のホワイト企業の見つけ方』など。2023年4月から編集局記者、編集委員、『本当に強い大学』2023年版編集長。

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