焼き肉店の部位メニューが細分化された理由 SNSを軸に価値の再定義と需給が一致した

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微妙な部位のおいしさの違いを食べ方、盛り方の提案で時代の投稿主流の潮流に合わせてきた焼き肉店。メニュー細分化は提供する側の価値と、実食する以外に魅せる、投稿するという新しい楽しみを発見した需要側のバランスがマッチした最高の結果なのです。メニューの細分化がSNSの定着前であれば、一過性のブームに終わり、これほど定着することはなかったかもしれません。

需要供給バランスの一方的偏りに起因

一方で、メニュー細分化による希少部位の需給バランス崩壊により、定着しているという見方もできます。需要と供給の一般論になりますが、まず需要から言うと、希少部位としての希少性という価値を見いだす→食べたい要望のお客さんの人気が高くなる(需要高騰)→価格高騰、高位安定という構図です。

供給面からみると、区分けにより、牛一頭から数キロしか取れない部位→供給が需要に追い付かない→価格高騰、高位安定となります。希少部位は万人が満足する味かは別の話ですが、需給バランスが一方的に崩れている状態が継続していることも認識しておくべきです。

今後ですが、希少部位によって、部位が細分化されるわけですから、細分化されているだけの焼き方がもっと注目されてくると考えられます。つまり、焼き方の多様化です。ガスレンジ、炭によって火力も、良く焼ける場所も違ってきますし、部位の数だけ焼き方が異なるのであれば、食べる方もこれまで同様、写真を撮って投稿することで喜びを感じている場合ではありません。店側が部位によって食べ方の提案をしてきているなら、もっと、火加減を見て、肉の発する音と対話しながら焼くことに集中すべきです。おいしく食べるために肉との真剣勝負が加速することにより、メニューの細分化がさらに充実してくるはずです。

小関 尚紀 リーマン作家/MBA

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こせき なおき / Naoki Koseki

1970年、大阪府生まれ。サラリーマン作家。筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程後期中退。早稲田大学大学院ビジネススクール修了(アジア太平洋研究科修士課程国際経営学専攻/東出浩教ゼミ)経営学修士。修士論文は『キャラクター選好プロセスモデルの探索的研究』 現在、都内企業に勤務しながら作家としての活動を行う。
 

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