あのDMMがチームラボに全力投資した理由 猪子寿之氏「もはや広告は人々に届かない」

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これまでは、影響力のあるメディアといえば、テレビなどのマスメディアしか存在せず、「現実=日常」「メディア=非日常」の世界に分離されている傾向が強かった。一方、今では、人々が日常的に目にするのはFacebookやInstagramなどのソーシャルメディアだ。スマートフォンでネットを開けば、身近な人たちのリアルが溢れ出し、それがコンテンツとなっている。

「自分はテレビ全盛期だった頃を知っている世代だから、現在の状況と比較する形で理解できるけど、もっと若い人は、リアリティが感じられないことは、目に入ってすらいないのではないか」(猪子氏)

大勢の認知を得なくても、敏感な人に届けばいい

チームラボ代表の猪子寿之氏と、DMM.com取締役の野本巧氏(筆者撮影)

今回の展示にチームラボと二人三脚で取り組んだパートナーは、DMM.comの証券事業、TVCM制作、新規事業を統括する野本巧取締役だ。野本氏も「かなり印象に残るクリエイティブをやらないと、TVCMはほとんど意味がないと思っている。これまでも存在したような普通のCMを作って1億円分流しても、おカネを捨てるようなもの」と話す。「DMM.プラネッツArt by teamLab」の具体的な費用は非公開だが、これまでの広告予算の枠で考えると、TVCM7〜8ヶ月分くらいの感覚だという。

「人が本当に感動するものを作ることができたら、それは必ず企業に返ってくる。今回も、多くの人に認知を得るというより、敏感な人に届くことを狙いとした。一緒に仕事をしたいという企業や、入社したいと思う人が増えるはず、と考えている」(同)

広い意味での対費用効果を考えると、十分投資する価値があったということだろう。一連の作品群は体験型のアートであるため、ソーシャルでの拡散も見逃せない。Instagramを開いてみると、主に女性が「dmm」が含まれたハッシュタグ(検索用キーワード)をつけて、今回の作品の写真や動画をアップしているのが目につく。「フジテレビの敷地内でやるということにも意味がある。我々に対してアンチな人も観に来てくれるかもしれない」と語る野本氏には、今回のイベントがもたらすDMMのブランドイメージへの影響について、先々まで見据えた緻密な計算があったようだ。

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