線引きはどこ? 「軽減税率」に揺れる外食業界 吉牛も店内で食べると税率10%、持ち帰ると5%!? 

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食品メーカーやスーパーは静観姿勢

こうした先行例を見ると、日本の外食企業が懸念するのも、杞憂とは言い切れない。

牛丼チェーンやハンバーガーショップの場合、店内と持ち帰りで、値段を差別化できるのか。会計やシステムなどバックヤードの事務負担ばかりでなく、メニューやレジでの案内といった、店舗でのルーティーン(通常業務)に混乱が生じる可能性がある。

「たとえば、海外の空港などでは、店とそれ以外のエリアが明確でないケースも少なくない。店頭で買った品を店の隅で食べていたら、ガードマンが来て『ここで食べるなら追加料金をもらう』と言われ、追い出されることもある」(外食業界関係者)。

むろん、日本の消費者にとって、軽減税率は未経験。コンビニエンスストアのイートイン・コーナーのように、外食なのか、持ち帰りにあたるのか、微妙な場合もある。温めた商品を配達するデリバリーも区分けが難しい。

国内の外食業界にとっては、今も円安や原料高を受け、ギリギリの価格競争をしている真っ只中だ。中食(なかしょく)分野をコンビニやスーパーなど、隣接業界と争っている現状もある。このうえ、食品にのみ軽減税率が適用されたら、その打撃は測り知れない。

大打撃を被るかもしれないだけに、声高に「反対」を唱える外食業界。一方、自らが恩恵を受けるかもしれない、食品メーカーやスーパーは、今のところ静観姿勢だ。消費税の軽減税率をめぐって、様々な業界の思惑が錯綜するなか、落としどころは簡単には見えない。

 

 

 

 

 

 

(撮影:尾形 文繁)

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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