喜劇役者が主役を演じるイタリアの悲劇 景気・経済観測(欧州)

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五つ星運動の内部には、責任ある政治団体として連立への参加を模索する動きも一部にある。ただ、グリッロ氏は所属議員が民主党政権に信認票を投じれば政界を引退すると発言し、現実路線への転換を牽制する。

反緊縮・反ユーロの言葉が独り歩きしているが、五つ星運動の選挙公約には、政府部門のスリム化、議員定数の削減、政治腐敗の根絶、環境重視、中小企業支援など、民主党の政策との共通点も多い。昨年5月の統一地方選挙で誕生した五つ星運動出身の市長は、手堅く現実的な行政運営を行っているとの評もある。

現実的な妥協点としては、五つ星運動が中道左派政権への信認投票を棄権することで政権発足にこぎ着け、個別の法案審議で閣外協力することが考えられる。国政レベルでは初の試みとなるが、シチリア州議会では民主党中心の政権に五つ星運動が閣外協力している前例がある。

再選挙となれば最短でも6月末

政党間の協議が物別れに終わった場合、再選挙のリスクが高まる。後述するとおり、イタリアの議会制度では、再選挙が行われるのは最短でも6月下旬から7月上旬となる。政局混乱が長期化すれば、欧州の信用不安再燃のきっかけとなりかねない。

再選挙までに要する日程をイタリアの憲法規定から確認しておく。「議会の解散権は大統領にある(イタリア共和国憲法第88条)」。「大統領は任期満了までの6カ月以内は議会の解散権を行使することができない(同88条)」。

「大統領の任期は7年(同85条)」で、現在のナポリターノ大統領の任期は5月15日に満了する。したがって、議会の解散・総選挙は、ナポリターノ大統領に代わる新たな大統領が就任してからとなる。「任期満了の30日前に新たな大統領が選出される(同85条)」。

「解散から70日以内に新たな議会が召集される(同61条)」。憲法上の規定はないが、議会の解散から総選挙までは、一般に45日程度の準備期間が設けられる。ここから、議会の解散権を有する次の大統領の選出が4月15日、就任するのが5月15日。就任直後に議会を解散したとしても、次に選挙が行われるのは、解散から45~70日以内で、最短で6月下旬から7月初旬となる。

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