日本でも、中間層の仕事がなくなる? 『ワーク・シフト』著者、リンダ・グラットン氏に聞く

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グラットン:そうすると、国を閉じてしまえ、と。でも日本は、かつて輸出主導型で成功した代表国です。ヨーロッパでも、メード・イン・ジャパンは、高品質製品の象徴でした。これは世界市場でも十分戦える証拠ではないですか。

渡邉:それは日本が貧しかった時代の話です。Y世代は生まれた頃から豊か。状況が異なります。

『ワーク・シフト』にも、メード・イン・ジャパンは高品質だと書かれていましたが、日本製品の特徴は、世界一軽いとか、世界一薄いとか、製品が目指す方向が決まっている中で、いかに高品質な製品を造るかという競争に勝ったことです。何か革命的な新しいものを生み出したかというと、昔からできていない。

グラットン:何かすでに敗北をしてしまったような言い方ですね。

渡邉:もちろん、今も日本に優秀な輸出企業は存在します。建設機械のコマツなどが代表例でしょう。そういう優秀な輸出企業は、どんどん出ていけばいい。僕の主張は、一部の優秀な人以外の普通の中間層は、負けるためにわざわざ外に出ていかなくていい、ということです。

ハイスキルとロースキル その中間の仕事が空洞化

渡邉:ただ欧州は状況が異なるのでしょうね。EU(欧州連合)がどんどん拡大し、英語が共通語。それが意味するのは、おそらく全員がインド人との戦いを強いられ、逃げ場がないという状況です。

グラットン:そのとおりです。でも私は悲観していません。欧州人でもインド人と競争できるからです。

たとえば欧州には、非常に強力な知的資産があります。広告企業、法律事務所、建築事務所、ドイツに代表される製造業、スイスの製薬企業などが代表例です。それに若者は英語が話せるので、何も欧州にとどまって仕事をする必要はありません。

渡邉:ただ、そうした仕事は知識集約的で、世界中の人がライバル、私は「無国籍ジャングル」と呼んでいますが、そのエリアの仕事の就業者数を集計しても、日本では就業者全体のわずか3%に過ぎません。それにグローバル市場では、勝ち残れる人は上位2割で、残りの8割は今より収入が落ちると『ワーク・シフト』にも書かれてあります。

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