日本でも、中間層の仕事がなくなる? 『ワーク・シフト』著者、リンダ・グラットン氏に聞く

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日本の若者も欧米と共通点が多い

渡邉:それから、同じアジアでも、韓国などは国内市場が小さく、グローバル化しないといけない理由がある。一方、日本は1500兆円の個人金融資産を背景とした巨大な国内市場があり、国内向けだけでも十分食べていける。

『ワーク・シフト』に描かれた世界というのは、いわば世界の70億人市場を相手に、ハングリーなインド人、中国人を相手にしながら、いかに勝つかという話です。ただそれは非常に難しいことです。私は自分の本では、日本人向けに、日本市場で、日本人の強みを生かす仕事を選ぶことを勧めています。

リンダ・グラットン
ロンドン・ビジネススクール教授
経営組織論の世界的権威で、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家」の1人。英『エコノミスト』誌の「仕事の未来を予測する識者200人」に名を連ねる。組織におけるイノベーションを促進するスポッツムーブメントの創始者。

グラットン:日本の状況は確かにユニークで興味深いと感じています。しかし、世界の人材市場は完全にグローバル化しています。そういう状況は日本にも必ず影響します。

以前、世界中のY世代(1980年以降生まれ)の意識調査をしましたが、そこでは異なる国同士でも、人々の共通性が強くなっている傾向が見えました。日本のY世代も、欧米との共通点が多く見られました。

ただ日本人は、彼ら自身の問題というより、仕事をしている環境において、ほかの国の若者とは大きく二つの点で違いが見られました。

一つは日本人がピラミッド構造の組織で仕事をしていること。もう一つは、オフィスに長時間いなければならない、などの義務感にさらされていることです。

そのため、日本人の若い世代は、教育を受けている段階では他国の若者と共通点が多いのですが、社会に出ると旧式な世界で暮らさなければならず、異質な部分が出てきます。重要なのは、Y世代が自分たちが望むことを強く主張することですね。

渡邉:ただ日本ではそうした傾向は見られません。それに内向きな若者も増えているといわれています。私は日本人全員が、世界70億人を相手に激しい競争を繰り広げる必要はないと思っています。向いていない人が、競争率70倍の激戦に参加するのは、不幸のもとでしかありません。

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