複雑すぎるカリスマ、アマゾンCEO大解剖 カリスマ風を吹かせる時間すらムダ?

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「顧客第一」を実現するために、アマゾンでは不可能とも思えるようなことを次々と成し遂げてきた。

安価な価格は流通効率化の成果だが、そのためにテクノロジーを駆使し、顧客の場所、商品の場所、配送センターの場所を最短で結び付ける方法を刻々とはじき出す。配送センター内部では、商品と作業員が無駄のないように配置され、ロボットも導入して、最速で発送が行われるようにプログラムしている。配送業者が仕分けに時間をかけなくてすむよう、アマゾン側がパッケージをあらかじめ仕分けする。

顧客との”エコシステム”こそが重要

時には、赤字覚悟で売ることもある。当初、売り出した書籍、その後に手掛けた電子書籍、そしてそれを読むための端末であるキンドルやタブレットコンピュータのキンドルファイアがそうだった。

だが、あるところが赤字でも、その商品が人気を生み、たくさん売れるようになり、その結果、薄利であっても多売することによって最終的に儲けが出る。1対1対応で考えるのではなく、アマゾンと顧客のもっと大きな”エコシステム”がそこにできることのほうが重要なのだ。

この薄利ビジネスは、アマゾンの大きな特徴で、批判もある。だが、これをただの子賢しい商人根性ととらえると、アマゾンの核心を見誤ることになる。アマゾンが薄利ビジネスを通して顧客第一を徹底させている理由は、そこにこそイノベーションの種があるからなのだ。

「われわれは、まず顧客が何を欲しているのかを見極めて、そこから逆算する」とベゾスも説明しているが、要は顧客の希望を叶えようと工夫をすることによって、新しい方法と商機を生み出すのに成功しているのだ。

自分たちの都合を優先したり、既存のやり方を踏襲したりするだけでは、それは不可能だったろう。その意味では、ベゾスは顧客を自分たちの”発明の道具”として使っていると言える。「朝のシャワーの中で、ほかの企業ならば競合をどう打ち負かしてやろうかと考える。けれどもアマゾンがシャワーの中で考えるのは、顧客のこと」とベゾスは語っている。

もちろん、薄利ビジネスは楽ではない。ベゾスは最近も「もっと大きなマージンのビジネスをやっていればどんなに楽かと、毎朝思いますよ」と話していた。

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