「ノーベル平和賞で脚光 IPCCが果たした役割」ジェフリー・サックス コロンビア大学地球研究所所長

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各国が取り組まなければならない3つの課題

 世界は、こうした問題に三つの方法で対応する必要がある。第一に、今年12月にインドネシアのバリ島で国際交渉が始まるが、各国は新しい「気候変動協定」の必要性を真剣に受け止めるべきである。京都議定書は2012年に失効するため、もっと強力な枠組みが必要となっている。熱帯雨林の消失を食い止め、燃費のよい自動車を開発し、二酸化炭素の排出量の少ない発電所を建設するなどで、2050年までに温室効果ガスの排出を安定化させる強力な目標を設定するのだ。

  第二に、各国政府は国際的な生物多様性の喪失、砂漠化、海洋の過剰漁獲といった国際的な問題に取り組むために、IPCCと同様の科学的な作業を行うべきである。これらの問題の危険性について、一般の人々や政府はほとんど理解していない。政府は損害の発生を抑制するために条約を締結しているが、それを実行しているわけではない。科学的な課題を理解していないからだ。

  最後に、私たちは政府を刷新しなければならない。IPCCのような国際組織は重要であるが、同時に国際的な問題を国内問題に�当てはめて�考えなければならない。各国政府は、気候変動が原因で起こっている降雨や嵐、干ばつ、洪水といった課題に取り組まなければならない。IPCCは、人類にとって重要な問題を解決するために科学者と政治家が協力できることを明らかにしたのである。

ジェフリー・サックス
1954年生まれ。80年ハーバード大学博士号取得後、83年に同大学経済学部教授に就任。現在はコロンビア大学地球研究所所長。国際開発の第一人者であり、途上国政府や国際機関のアドバイザーを務める。『貧因の終焉』など著書多数。

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