戦場のレバノン人エリートが悟った本当の幸せ フランスINSEAD突撃取材(上)

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トラックビジネスは命懸けとなり、つねに爆弾が降り注いでくるリスクの中で、ジョーは会社の株式を売り払い、就職活動を始めた。レバノンの国内市場は小さく政局も不安定であるため、国外で仕事をしたいと思い、ロンドンを拠点に職を探した。アラビア語とフランス語と英語に堪能であることから、中近東での事業拡大を狙う国際企業から引く手あまただった。

そうしてオファーをもらったのが世界随一のコントラクター、ベクテル社である(ちなみに、爆弾を恐れずトラックビジネスを続けたジョーのパートナーは、現在、事業をイラクやヨルダンに拡大させ、大儲けしているという。レバノンは周辺諸国に比べて人口もわずか400万人と国内市場が小さいので、何をするにしても世界市場に進出する)

ベクテルの思い出

ジョーは当初、人生の目的が何かがよくわかっていなかったが、まずは国際的な仕事をして、自身の力を証明したいと考えた。しかし、実際に働き始めると、思い描いていた仕事と異なり、会社の人も極めて競争的で何かが違うと思った。

そんな中、1人のメンターの存在がジョーの助けになった。ジュリア(仮名)はベクテルという男性色の強い、白人アメリカ人文化の会社で、英国人女性として初めて幹部職に出世した。彼女はいつもジョーに最善を尽くし、周囲に建設的な助言を求めるようアドバイスした。献身的なメンターの存在に心を強くしたジョーは、彼女のためにも一生懸命働きたいと思った。“自分のために一生懸命働かなければならない”ではなく、“彼女のために一生懸命働きたい”と思うようになったのだ。

ジュリアは社内で出遅れていたジョーに、さまざまな社内ポジションを用意して最大限支援した。あとで知ったことだが、ジュリアは白人アメリカ人が大勢を占める会社に入ってきたマイノリティのレバノン人青年に、25年前の自分の境遇を重ね合わせていたのだという。

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