戦場のレバノン人エリートが悟った本当の幸せ フランスINSEAD突撃取材(上)

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しかしシリアがレバノン国内の反シリア政治家を粛清するなど圧政を強める中、2005年に国民が蜂起してシリアを追い出した。400万人の国民のうち、実に150万人がデモに参加したという。

しかしその後も政局が安定することはなく、イスラエルとの戦いでナショナルレジスタンスの役割を担ったヒズボラ(イランやシリアから支援を受けており、政治的にも軍事的にもレバノン政府より強い)が国政を乗っ取ろうとするなど、レバノン社会は引き続き流動的である。政局も不安定で人口も小さく、大国に囲まれるレバノンの友人は、「自国の資源は人材しかない」と言い切る。

貧富の差も激しく、決して経済的に豊かとはいえないが、エリート層の学習意欲は非常に高く、イスラム社会の中では最も多く海外に留学生を送り出している国のひとつである。

文化的に戦場のレバノンでは、“平均”は落ちこぼれ

そんなレバノンで生まれ育ったジョーは、学校ではいつも平均以下だと言われてきた。将来は●●●(職業差別的なおそれがあるため、グローバルエリート本人の判断で消しています)になるのが関の山だと言われ続けた。決して成績が悪かったわけではないが、日々戦場のレバノンにおいて平均程度の人材では、社会から脱落したも同然だという。

ジョーはレバノンの大学に在学中、トラック輸送の会社を立ち上げた。この会社では、荷物を倉庫に運ばずトラックの荷台の中でパッケージするため、倉庫は不要。そのため、顧客は時間を省け、会社も物流コストを大幅短縮することができる。ビジネスは軌道に乗りトラックの台数も増えた。サラリーマンをしているレバノン人とはケタ違いのおカネも入ってきた。人生でカネを稼ぐことはいとも簡単に思えた。しかし、それが続いたのは2005年までだった。

イスラエルとの戦争が始まると、「ヒズボラがシリアからトラックを使って武器を密輸している」との言い分で、イスラエルがトラックをターゲットにした爆撃を激化させたのだ。

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