”軍事予算獲得”にひた走る、中国人民解放軍 尖閣「レーザー照射事件」の裏にあった意外な事実

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解放軍の「失われた10年」を取り戻す戦いが始まった!

繰り返しになるが、人民解放軍は胡錦濤時代には冷や飯を食わされたとの意識が強い。偉大な軍人であった鄧小平時代はもちろん、江沢民に移行したときまではまだよく、ビッグイベントがあれば江沢民はまめに参加したものだったという。

ただ、江沢民は国家主席を退任してからも、軍事委員会主席に居残り続け、胡錦濤の不満を醸成する原因となった。その結果、胡錦濤は解放軍と微妙な関係となり、軍事イベントにはあまり参加せず、人事面でも解放軍系を優遇した形跡は認められない。実際に、空母「遼寧」の竣工式に温家宝首相と2人で参加した際には、「両巨頭そろい踏みは、まれに見る光景」と関係者に皮肉られたほどだったという。

したがって、習近平時代の10年は人民解放軍にとっては、胡錦濤時代の「失われた10年」の後の「正常化」の時代と位置付けられる。中国にとって軍事の「正常化」とは何か。13億の人口と広大な国土、世界第2位のGDPを持つ大国として、しかるべき軍事力を保有するということを意味する。

「当然、周辺諸国は脅威を感じるだろうが、それは仕方がないこと」であり、「中国が侵略意識さえ持たなければ、米国や過去のソ連がそうであったように中国の強大な軍事力も、周辺国はいずれ自然なものとして受け入れられるようになる」と真剣に信じているフシがある。

こうしたなか象徴的なのは、2012年10月開催の共産党大会で承認された中央委員に占める軍事産業出身者が増えたことだろう(上表)。江沢民時代の第14期(5年以下同)、第15期の中央委員の総数はそれぞれ189人、193人であったが、軍事産業出身者は各2名であった。

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