ベネッセ、原田退任後も見えない復活の兆し 営業利益は赤字転落、JPX400からも除外

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結果、現在でもデジタル教材を選ぶ中高生の会員はわずか2割にすぎない。「まだニーズがそれほどなかったのに、やり方が早すぎた」(会社側)。原田氏はまた、学習塾とフランチャイズ契約を結び「進研ゼミプラス」を使ってもらう試みを打ち出していたが、「収益性を見極め、拙速な拡大路線は見直す方針」(同)という。

原田氏の後任として、生え抜きの小林仁氏が国内教育事業のトップに就任。復活に向け、学年別によりきめ細かいサポートを可能にするなど、見失っていた進研ゼミの良さを追求していく方針に切り替えた。だが、まだ底打ちの兆しは見えていない。

日本を抜く勢いの中国事業

今年5月11日の決算会見で退任を表明した原田泳幸氏(撮影:梅谷秀司)

国内教育事業が苦戦する一方で、中国で児童向け通信講座「楽智小天地」(こどもちゃれんじ)などを展開する海外事業が急激に拡大している。第1四半期は売上高68億円(前年同期比9.1%増)、営業利益8億円(同35.6%増)。現地に目立った競合がない中、キャラクターのしまじろう(巧虎)で人気に火がついた。

楽智小天地の会員数は直近で100万人を超え、日本のこどもちゃれんじの会員数74万人を上回っている。日本とは異なり、ダイレクトメールではなくショップを拠点に新規会員を獲得しており、2017年末までに24拠点に拡大する(2015年末は6拠点)。

また295軒の高齢者向けホーム(2016年6月末)を展開する介護・保育事業も堅調に稼いでいる。入居率は92%と高く、第1四半期の売上高が246億円(前年同期比10.6%増)、営業利益は15億円(同140.8%)と大きく伸びた。当面は毎年15施設のペースで拡大にアクセルを踏む。

原田氏は5月の退任時の会見で「”逃げるのか"と言われるかもしれないが」と前置きしたうえで、「社員が筋肉痛を起こすようなリーダーシップが必要な変革の時期は終わった。実行のフェーズはベネッセでの長い経験を持った次の経営陣に任せても大丈夫だと判断した」と説明している。

ただ、その遺産は目立った収益を上げていないのも事実。国内教育事業はいつ底打ちするのか。また海外事業を介護事業に次ぐ収益柱の柱として育てられるのか。原田氏の後を継いだ経営陣は重責を担っている。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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