勝ちたいと思った瞬間、既に負けているワケ 有名麻雀プロが考える「成果を生む発想」

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損得勘定は、それが透けて見えたときに、相手を不快な気持ちにさせます。それでは勝ちに近づくどころか、遠ざかってしまいます。真の勝利とは、自分が勝っても負けても、相手に、また会いたい、また一緒に打ちたいと思ってもらうことです。自分がどんなに強くても、相手をしてくれる人がいなければ、勝負は成立しません。「自分が、自分が」ではなく、相手あっての自分なのです。また、相手のためを思って何かを行ったとしても、余計なことだったなんてこともままあります。それをこんなにしてあげたのになんでわかってくれないの?では、相手に認めてもらおうという損得勘定で動いているだけです。そういうこともあるんだな、と思っていればいいだけなのです。

そう思えるようになるためには、普段の生活の中で物に対して愛情を注いでいくことが大切になってきます。物は見返りを求めてはこないからです。麻雀プロである私は、牌や卓を擬人化し、愛情を注いでいます。「今日も麻雀を打たせてくれてありがとう」。牌と卓が無ければ、麻雀は打てないわけです。その牌や卓を作ってくれている人がいるわけです。その人たちに感謝の気持ちを持ちながら、麻雀という摩訶不思議なゲームを作ってくれた人と歴史に感謝をしながら、麻雀を打つわけです。

「アイツだけには負けたくない」はすでに負けている

対局中に「アイツだけには負けたくない」なんてそう思った瞬間、すでに負けている理由はここにあります。技術や強さを求めるのではなく、物に対して優しさと美しさを求めていく。そうすれば物からも愛され、結果としてうまくなり、強くもなれるのです。

私は、強くなるためにも、うまくなるためにも、必要な大前提とは、物からも人からも「愛される人になること」だと考えています。

目先の勝ち負けを追求するための小手先の技術論は結局のところ、そこまで重要ではありません。場当たり的なテクニックを駆使し、目先の勝ち負けのために牌たちを操る。技術論や比較論から脱却し、確率論や効率論といった数字の世界=損得勘定から離れないかぎり、牌たちから愛されることはありません。

牌の数は136枚。そのうち字牌は28枚。残りの数牌は108枚。そうです。煩悩の数と同じです。確率論、効率論、そして自己利益。心身を悩まし、苦しめ、煩わせる煩悩に心を奪われてはならない戒めなのです。

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