「若者の酒離れ」は本当か(上) 答えは「NO!」鍵は、万博世代の息子たち

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出身国によって、酒の飲み方が違うのに驚き。

話はもとに戻って、

「研究テーマが『ヨーロッパ統合』なので、途中でイギリスを離れて、ヨーロッパの数都市を回りました。各地で政府関係者や企業、研究者の薫陶を受ける機会があったんです。それも貴重な経験でしたが、この取材のテーマである酒ということでいうと、今でも印象に残っているのは、出身国によって飲む酒や、飲み方がまったく違う、ということ」

「ビジネススクールには寮の1階にパブがあって、イギリス人はそこでビールばっかり飲んでる。逆に、フランス人やスペイン人は、食事中に何を飲んでいても、最後は必ずコニャックや甘いリキュールでしめる」

例外なく?

「そう、例外なく、自然にそうしてる。そのとき、思ったんです。ああ、こいつらは、親の代のそのまた親の代から、ずっとこういう酒の飲み方をしてきたんだ、って」

日本だと、ひと昔前は、最初はまずビール、それから日本酒というのが一般的な飲み方でしたが。

「もう、だいぶ前から違ってきてるでしょ? ビールから日本酒っていう流れは、我々の少し前の世代にはセオリーだったかもしれないけど。いまの若い人たちは、最初から甘いカクテルもどきのやつを頼むし」

「で、学期の途中で、何か、お祝い事があったんですけど、ヨーロッパの連中は、必ずシャンパンを開けるんですよ。それを見て、院生ぐらいの人でも、当たり前みたいにこういうことをする。TPOに合わせて飲み分ける、そういう酒の飲み方が、文化として根付いてる。感じ入るものがありましたね」

1996年といえば、1985年のプラザ合意以降、円高で企業の海外進出が加速。85年以前には年間で200件に届くか届かないかだった進出件数が、90年には北米、欧州だけで400件に迫り、96年には中国、アジア全域を含め年間1,000件に達する勢いとなった、ある意味節目の年だと言えます(東洋経済・海外進出企業調査による)。

研究職とはいえ、日本人のサラリーマンが、ひと昔前の水杯のような悲壮な覚悟などはなしに、当たり前のように海外へ出かけ、ひとりひとりが直接異文化に接し、刺激を受けて帰ってくる、そんな時代が始まったのです。

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