大井川鉄道「トーマス」とソニーの意外な関係 両社の仲介に「京阪電鉄」もひと役買っていた

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このように、大井川鉄道の危機を救ったのは「きかんしゃトーマス」、そして債務免除と資本増強といってよいであろう。では、日本国内における「きかんしゃトーマス」のライセンスを有するソニー・CPが、大井川鉄道と提携しているのは、どのような理由だろうか。

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「Day Out With Thomas」3年目となった今年は、昨年の「きかんしゃジェームス」に続き、バスの「バーティー」が登場。毎年バージョンアップしているところも見逃せない ©2016 Gullane (Thomas) Limited

同社に問い合せたところ、「実際の蒸気機関車で『きかんしゃトーマス』を運転する『Day Out With Thomas』を実現できることです」という明確な回答が返ってきた。「Day Out With Thomas」はトーマスの休日という意味で、物語の舞台となっているソドー島から離れた場所にトーマスが行くという意味で使われている。

本家のイギリスでは、毎年いくつもの保存鉄道で「Day Out With Thomas」が行われているが、イギリス国外で実施しているのはオーストラリアとアメリカだけ。大井川鉄道はアジアで初めてであり、かつアジアで唯一の「Day Out With Thomas」を行っている鉄道だ。こうしてみると、ソニー・CPがその実現を模索していたことが理解できる。

ソニーに大井川を紹介した会社は?

大井川鉄道以外でも、富士急行や京阪電気鉄道(以下、京阪電鉄)で「きかんしゃトーマスとなかまたち」のキャラクターを使った電車は走っているし、富士急行系列の富士急ハイランドには「トーマスランド」もある。しかし、これらは電車にラッピングをしたり、遊園地の遊具だったりで、実際の蒸気機関車を使用しているわけではない。

また、愛知県犬山市の日本モンキーパークに「トーマスとジェームスのハッピートレイン」が2009年初頭まで走っていた。遊園地の遊戯鉄道とはいえ、途中に公道の踏切があり、2本の列車が中間駅で交換するなど、名古屋鉄道系列の遊園地ならではの本格派だった。しかし、ここでも「Day Out With Thomas」の名称は使えなかった。なぜなら、牽引がディーゼル機関車だったからだ。

ソニー・CPに大井川鉄道を紹介したのは、なんと京阪電鉄だった。同社の名車と呼ばれるテレビカー3000系(初代)は、大井川鉄道と富山地方鉄道に譲渡されて活躍していた。その本家の京阪電鉄の3000系(初代)が2013年春にいよいよ引退することになり、同車を譲受して走らせている大井川鉄道と富山地方鉄道とが組んでのさよならイベントをしたのだ。2013年といえば、大井川鉄道が窮地にあえいでいる、まさにそのタイミングだ。翌年には「きかんしゃトーマス」が3年契約で走り始めたのだから、大井川鉄道とソニー・CPの間でとんとん拍子に話が進んだものと推測される。

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