途方もない廃炉作業、その第一歩が始まった 「事故2年後」の福島第一原発

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バスは4号機のタービン建屋を過ぎ、放射性廃棄物集中処理施設(現在は水処

理設備として利用)を迂回した後に、4号機原子炉建屋近くで停車。比較的放射線量が低い地点(108マイクロシーベルト/時)で、初めてバスを降りての取材が許された。前方には、水素爆発で吹き飛んだ3号機原子炉建屋や、原型をとどめている2号機も見えた(右)。

 

水素爆発で原子炉建屋の上部が破損した4号機建屋では建屋上部のがれき撤去が進められた後、使用済み燃料の「取り出し用カバー」の骨組み建設が始まっていた(写真左)。

東電ではカバー建設後の「今年11月から使用済み燃料の取り出し作業を開始し、1年ちょっとで終えたい」(高橋毅・福島第一原発所長、写真下)という。だが、計画通り進むかについては未知数の部分も多い。

4号機の使用済み燃料プールは、原子力政策に詳しい米国の上院議員が「最大のリスク」と指摘したように、海外からも注目されている。

同プールに保管されている燃料集合体は1535体にのぼり、そのうち高熱を発し続けている使用済み燃料が1331体を占める。2011年3月の事故直後には、4号機の使用済み燃料プールの水が干上がることにより、膨大な燃料が発火して放射性物質が広範囲に拡散する事態が危惧された。

コアコンクリート相互反応が発生して放射性物質が拡散する最悪の事態が4号機の使用済み燃料プールを皮切りに福島第一原発全体に広がった場合、「強制移転を求めるべき地域が半径170キロメートル以遠にも生じる可能性」が、近藤駿介・原子力委員会委員長による「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」(2011年3月25日作成)で指摘されていた。

幸いなことに、ヘリコプターからの目視で、水素爆発後もプールが冷却水で満たされていることが確認され、その後、注水作業が続けられることで、首都圏を含む東日本全体が高いレベルの放射能で汚染される事態は回避された。

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