成功を続ける人は、「祝う」ことを軽視しない 43人の世界記録保持者を育てた名将の心得

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しかし、実際に成し遂げた瞬間の思い出にはとうてい及びません。その瞬間の思い出は、自分だけが自分に贈ることのできる何よりのプレゼントなのです。

どんなにささやかな成功でも「祝う」ことが大事

長年の経験を通して、私は「祝う」ことの価値を固く信じるようになりました。盛大なものでも、ささやかなものでも、祝うという行為は何かが完了したことの合図なのです。1つ完了して祝うたびに、それが自分の成長の目印となります。

若いころは、コーチをしていても、あまり祝うことを重視しませんでした。しかしここ数年は、何かを達成したときは「祝う」という形で達成を認識することが大事で、それがじつに楽しいものだということがわかってきました。

目標を実現するには多くの犠牲が必要です。「時間」というけっして取り戻せないものを消費し、毎日の課題をこなし、心と身体を消耗させながら、進む道を見つけていかなければなりません。

しかし、いったん目標地点――それがささやかな目標だったとしても――に達した瞬間を迎えたら、立ち止まって自分と向き合い、自分が何を達成し、何を発見したかを考える必要があります。

チャンピオンになったり、自己ベストを更新したり、大事な試験でトップになったりして成功を経験したのなら、その喜びに思う存分浸りましょう。また、残念ながら成功しなかったとしても、それまでの道のりとその過程で見たこと、学んだことを祝いましょう。

私が勧めるメソッドは、結果ではなく、成長のプロセスを重視しています。プロセスを通してさまざまなことを学ぶことに大きな意味があるのです。

バスケットボール選手を引退して出版界に入ったリッチ・オコナーは、ニューヨークで複数の一流雑誌で編集長になりました。

どこもスタッフは少人数なので、編集者、ライター、デザイナー、カメラマンが毎月働きづめで雑誌を作る厳しい仕事です。1冊を完成させて印刷機に送ったら、もう次の新しい締切日が待っています。

リッチは、こうした消耗戦が、クリエーティブであるべき仕事をただの流れ作業にしてしまうおそれがあると考えました。彼のスタッフは「何かを作る喜び」に浸ることなく、締め切りに追われていました。そこで、ひとたび編集作業が終わって雑誌が彼らの手を離れたら、その1、2日後に会議室で打ち上げパーティを開くことにしたのです。といっても、ピザやサンドイッチが出る程度の簡単なものです。ただ、その中身はとても濃いものでした。

パーティの場でリッチは全員に感謝しました。「自分たちがどんなすごいことをやり抜いたかを認識してほしかった。『君たちは雑誌を作ったんだぞ!』と言いたかった。誰もができることではないからね。世界の動きを止めることはないだろうが、彼らはたしかに特別なことをやり遂げた。目標を決め、実現させた。だから、次の仕事に取りかかる前に、一緒にひと息ついて、作り上げたものを祝いたいと思ったんだ」

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