”株高”は消費につながるのか? アベノミクスで活況、動き出した高額消費

拡大
縮小

海外に流出する株高効果

ただ、高額消費の拡大はまだ本物ではないとの見方も強い。

ある百貨店関係者は「高額品が動き始めたといっても、いずれも数十万円レベルで、500万~1000万といった超高額品の動きはまだまだ鈍い。今後、そこがどうなるかだ」と語る。

また、自動車でも本当の高級車は動きが鈍い。ドイツ車を中心に輸入車の販売台数は足元で10%増だが、これは日本の消費者に受け入れられたプレミアムコンパクト車種が中心で、新政権発足以前の昨年から続く流れだ。

「EクラスやSクラスなど高価格帯車種はモデルサイクルの関係もあり、むしろ厳しい。景況感がダイレクトに結び付いている実感はない」(メルセデス・ベンツ日本)と言い切る。

今後、より重要になってくるのはこうした高額消費が、国内の景気回復につながるかどうかだ。

足元で売れ始めている高級ブランドの時計、カメラ、雑貨、宝飾品や、今後期待されている超高級品も、その多くが欧州などからの輸入品である。

実際、1月の貿易収支を見ると、欧州からの輸入額は円安にもかかわらず、衣類・同付属品が21%増、家具17%増、バッグ類9%増と大幅な伸びを記録した(昨年はいずれも7%前後の伸び)。

要するに海外旅行を含め、株高で国内消費が拡大しても、その多くは海外の生産・所得に流出するというわけだ。その結果、国内生産や雇用への波及効果は小さい。

それを“予言”するのがスーパーマーケット業界の状況だ。同じ流通業でも1月の売上高は4・7%減と、順調な百貨店と明暗を分けた。昨年、スーパーの大手各社は1000品目単位で値下げを実施したが、今年に入っても値下げ競争は加速している。

イオンの横尾博・専務執行役グループ商品最高責任者は「一般の消費者は、向こう半年や10カ月ぐらいは電気代やガソリン代など生活インフラの価格が上昇し、可処分所得は厳しくなるだろう。安価なプライベートブランドの評価がますます高まる」と話す。

アベノミクスは国内需要の拡大に結びつくのか。消費の状況はまだら模様だ。

(撮影:今井康一) 

(週刊東洋経済2013年3月9日号)

週刊東洋経済編集部
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