守護神・牧田は、球速130kmでなぜ勝てる 強靱なメンタルと巧妙なテクニック

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今回のWBCで使用されているのは、いわゆる「滑るボール」だ。日本球界の公式球より縫い目が高く、指を引っかけにくい。大会前、エースの田中将大はWBC球への対応をマスコミに不安視された。

ただ、牧田は考え方からして違う。今年1月、西武第二球場で行った自主トレの際にはこう話していた。

「滑る感じはあるけど、気にするほどではありません。自主トレのテーマは、ボールにどれだけ慣れるか。『滑る』と意識すると逆に力が入ってしまうので、普段のボールより少し滑るくらいの意識だとちょうどいい」

「滑る、滑る」と思って投げれば、余計に「滑る」と感じがちだ。使うボールは変わらない一方、意識の持ち方は自分で変えることができる。前者と後者のどちらのメンタルが好結果につながるか、言うまでもないだろう。

キューバとの戦い方

侍ジャパンの守護神は、かくも頼もしい。WBCのポイントはこう考えている。

「コントロールですね。向こうの打者がどう振ってくるかは、やってみないとわからない。三振や空振りを取るのではなく、打たせて取るという自分の持ち味を出せれば。ストライクゾーンの中で勝負していきたい。アンダースロー特有の目線のズレ、左右、高低、広く使っていきたい」

第1ラウンド、そして第2ラウンドでもライバルとなるキューバについては、こんな想定をしている。

「横の変化にも、真っすぐのタイミングで振ってきますね。変化球に弱いイメージ。とりあえず真っすぐを待っている。ただ、投げてみて、バッターが振ってくるのを見ないと、どう投げたらいいのかわからない。でも一般的に外国人は、胸元当たりが苦手なんじゃないかな」

対戦する前に敵の特徴を把握し、勝負の場では肌感覚から読み取る。そして巧妙なテクニックを駆使し、相手に微妙なズレを引き起こす。

周到な準備とその場での瞬間的な対応。これぞ、マインドゲームを制するための要素だ。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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