歴史が示唆する「英国EU離脱」本当の方向性

現代を生き抜くヒントはむしろ過去にある

(写真:Getty Images)

6月の国民投票で決まったイギリスの欧州連合(EU)からの離脱。その結果は世界に衝撃を与えた。投票から約1カ月半経ち、離脱決定直後の驚がくと混乱は、現在では沈静化した。しかし離脱をめぐる実務的な詰めやスケジュールはまさに検討が始まったばかりで、情勢は流動的だ。

イギリス国民と欧州大陸との関係はどうなるのか。歴史にさかのぼれば、そのヒントが見つかるかもしれない。

イギリスの食卓を変えたEC加盟の意味

43年前の1973年1月1日。イギリスはEC(欧州共同体)に加盟した。まもなくイギリス人の生活に目に見える形で変化が現れた。それまではスパム(缶詰のハム)とじゃがいも、白身魚のフライ(フィッシュフィンガー)が中心だった家庭の食卓に、野菜と果物があふれだしたのだ。この変化は、「イギリス人が初めてビタミンを知った」とさえいわれたほどだ。

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現代の世であっても「まずい」と酷評されるイギリスの食事。40年以上前の庶民の食卓は、大陸の欧州人から見れば、貧相すぎる食卓だったことは容易に想像がつく。当時、ロンドンに留学していた川北稔氏(当時大阪大学助教授、現在は阪大名誉教授。イギリス近代史)は、「その変化は劇的だった」と振り返る。川北氏は「EC、つまり欧州の共同市場はイギリスに生活革命をもたらした」と指摘する。

もちろん食卓のみに変化が起きたわけではない。ロンドンの金融街・シティにも世界の金融機関が集結し、付随する産業(法律、会計の専門サービス、IT、印刷産業など)もロンドンに集まることで、イギリスは欧州最大の金融としての機能を高めた。

ECはその後、EUとなり、イギリスは通貨統合には距離を置きつつも、欧州共同市場という巨大な市場の恩恵を受けることになる。関税だけでなくさまざまな規制が単一化することのメリットをイギリスは享受した。現在のイギリスの貿易の約50%はEU向けであり、EUの対英貿易は15%程度である。この数字を見るかぎり、イギリスにとって輸出先としてEU市場が重要であることがわかる。

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